一括査定は、オンライン上で複数の不動産会社に査定を依頼できるサービスです。まとめて複数社を比較できるので、好条件を提示する不動産会社を見つけやすい点がメリットです。
しかし、不動産一括サイトも万能なサービスではなく、「営業の電話やメールがくる」「地域によっては対応していない」といったデメリットもあります。
自分で不動産会社を見極めることができれば非常に有益なサービスなので、デメリットや注意点を把握したうえでうまく活用しましょう。
優良な一括査定サイトの特徴としては、提携不動産会社の多さや、成約件数の多さなどがあげられます。
不動産一括査定サイトを使うときの注意点やデメリット6つ
不動産の価格を調べるのに便利な一括査定ですが、必ずしも万能なサービスではありません。
一括査定特有の注意点やデメリットがあるので、申し込む前に次のポイントを押さえておきましょう。
- 一括査定でできるのは「不動産会社の紹介・マッチング」まで
- 正確な査定には「訪問査定」が必要
- 査定額がそのまま売却価格になるわけではない
- 営業の電話やメールがくる
- 提携していない不動産会社には査定依頼できない
- 地域によっては対応していない場合がある
これらのポイントを理解したうえで利用すれば、一括査定で優良な不動産会社を見つけることが可能です。
次の項目から、1つずつ詳しく解説していきます。
1.一括査定でできるのは「不動産会社の紹介・マッチング」まで
まずは一括査定の仕組みとともに、どのようなことができるサービスなのか解説します。
一括査定は、不動産所有者と不動産会社をつなげるサービスです。一括査定サイトの運営者自体は不動産会社ではなく、あくまでオンライン上の「マッチングする場」を提供しているだけです。
不動産会社は、一括査定サイトを介して顧客を探す代わりに、紹介料を支払います。この紹介料が一括査定サイトの収入となるので、不動産所有者は無料で査定を依頼できるのです。
査定は各不動産会社が独自におこなっており、その後の対応もすべて不動産会社の責任でおこなわれます。
一括査定でわかるのは「どの不動産会社がどれくらいの価格で物件を評価したか」までであり、具体的な売却手続きは各不動産会社と個別に進めると考えましょう。
査定額や対応に納得できなければ売却依頼しなくてもOK
一括査定サイトを使うにあたって気になるのが、売却依頼を強制されないかという点です。
いくら無料でも、必ずどこかの不動産会社と契約しなければいけないのであれば、申し込むのも気が引けるでしょう。
しかし、一括査定を利用したからといって必ず売却依頼をする必要はありません。紹介された不動産会社に納得できなければ、すべてキャンセルしても大丈夫です。
キャンセル料もかからないので、「とりあえず価格を見てから考えたい」という際も気軽に査定を依頼できます。
2.正確な査定には「訪問査定」が必要
不動産会社がおこなう査定には「机上査定」と「訪問査定」の2種類があり、一括査定でおこなえるのは机上査定のほうです。
机上査定 | 現地の不動産は見ずに、立地や面積などデータのみで査定する方法。 |
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訪問査定 | 現地で不動産を確認し、実際の状況を確認して査定する方法。 |
机上査定は結果が早くわかる一方、個別の事情が反映されません。建物の管理状態や近隣の住環境などが考慮されないため、実際の相場からずれてしまう可能性があります。
正確な査定をするには、不動産会社が現地に行って調査する訪問査定が必須です。まずは一括査定でいくつかの不動産会社を比較し、そのなかから数社を選んで訪問査定の依頼をしましょう。
訪問査定の依頼は3社程度がおすすめ
一括査定ではおおむね4~10社程度の不動産会社に査定してもらえますが、そこから訪問査定を依頼するのは3社程度に絞るのがおすすめです。
1社だけだと比較対象がないため良し悪しを判断できませんが、増やしすぎるのも各社とのやり取りや日程調整が面倒になります。
選択肢を残しつつ落ち着いて検討するためには、3社程度に厳選してじっくり比べるのが良いでしょう。
3.査定額がそのまま売却価格になるわけではない
査定はあくまで「この価格なら売れるだろう」という予測であり、必ず査定額通りに売れるわけではありません。
売却価格は最終的に「売主と買主の合意」で決まるため、市場動向や価格交渉によって変動します。査定額より安くなることもあれば、高く売れることもあるでしょう。
また、売り出し価格(最初にいくらで売り始めるか)の決定権は売主にあるため、査定額より高額の価格設定で売り出すことも可能です。
例えば、自分が「2,000万円じゃないと売らない!」と考えるのであれば、査定額が1,000万円でも2,000万円で売り出すことはできます。
ただし、相場を超える高値で売り出せば当然売りにくくなります。価格設定をするときは自分の希望にこだわりすぎず、不動産会社の意見を踏まえて決定しましょう。
高すぎる査定額には注意が必要
査定でとくに注意したいのは、高すぎる査定額を出してくる不動産会社です。あまりにも相場とかけ離れた金額を提示してくる場合、悪質業者の可能性があります。
不動産会社は媒介契約(不動産の売却を請け負う契約)を取らなければ利益につながらないので、見せかけの高額査定で客を引き込み、後から値下げを迫るケースがあるのです。
こうした悪質業者を避けるうえでも、一括査定は役に立ちます。複数の不動産会社にまとめて査定を依頼できるので、相場からかけ離れた不動産会社を弾くことができるのです。
適正な売却価格を見極める方法とは?
市場動向や価格交渉によって変わる不動産の売却価格ですが、目安となる適正価格を見極めておかなければ、安く買い叩かれて損をするかもしれません。
適正な売却価格を見極める方法としては、次のような方法があります。
一括査定を使った方法 | ・各査定額の平均から適正価格を把握する ※他の査定額と比べて不自然にかけ離れた査定は弾く |
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他の物件情報などから調べる方法 | ・不動産ポータルサイトで近隣の売り出し中物件をチェックする ・国土交通省の「土地総合情報システム」や、不動産流通機構の「不動産流通標準情報システム」で取引事例を調べる |
1つ目は、先に解説したように相場からかけ離れた不動産会社を弾きつつ、それ以外の査定額からおおまかな相場を判断する方法です。基本的には、この方法だけでも適正な価格を判断できます。
2つ目の方法として、他の物件情報から条件の近いものを調べるというやり方があります。同じ地域で似た条件の不動産があれば、適正価格を決める判断材料になるでしょう。
ただし、似た物件が必ず見つかるとは限りませんし、わずかな条件の違いや売り出す時期によっても相場は変動するので、2つ目の方法は参考程度に捉えることをおすすめします。
4.営業の電話やメールがくる
一括査定を申し込むと、不動産会社から営業の電話やメールが送られてきます。1度に複数社から連絡がくるため、人によっては煩わしいと思うでしょう。
しかし、優良な不動産会社であれば、何度もしつこく営業してくることはありません。「いまは売却しない」「他社に売却を依頼した」などと伝えれば、それ以降の営業はストップできます。
一括査定を使う人は価格が知りたいだけ(売却意思はない)という人も多く、不動産会社もそのことは理解しています。電話やメールがきても程よく対応しておけば、強引な営業はされないでしょう。
しつこい営業は一括査定サイトに相談しよう
不動産会社からしつこい営業をかけられた場合、一括査定サイトの運営者にクレームを入れると良いでしょう。運営者のほうから、不動産会社へ注意してもらえます。
一括査定サイト側は提携している不動産会社の質を高くしておきたいので、クレームが多い場合は最終的に提携を解除します。不動産会社にとっては、営業機会の損失という大きなデメリットです。
こうした事情から、一括査定の運営者を通したクレームは個人でクレームを入れるより大きな効果が期待できます。しつこい営業も、スピーディーに止められる可能性が高いでしょう。
5.提携していない不動産会社には査定依頼できない
どれだけ提携先が多い一括査定サイトでも、すべての不動産会社と提携しているわけではありません。大手・中小問わず、一括査定サイトと提携していない不動産会社は多々あります。
気になる不動産会社があっても、未提携だと査定を申し込めない点は一括査定のデメリットです。
一括査定から依頼できない不動産会社については、個別に査定を依頼しましょう。一括査定と並行して問い合わせれば、他の不動産会社とも比較できます。
複数の一括査定を使い分けるのもあり
一括査定サイトによって提携している不動産会社は変わるため、複数の一括査定を使い分けるのも良いでしょう。
一括査定サイトの例としては、次のWebサイトがあげられます。
一括査定サイト | 提携不動産会社数(2022年時点) | 同時査定可能数 |
---|---|---|
イエウール | 2,000社以上 | 最大6社 |
HOME4U | 2,000社以上 | 最大6社 |
すまいValue | 900店舗(大手6社) | 最大6社 |
複数の一括査定サイトを使ってもペナルティはないので、気軽に活用できます。
ただし、査定の依頼数が多ければ営業の電話・メールも多くなります。煩わしさを避けるなら、一括査定は1サイトのみ利用したほうが良いでしょう。
6.地域によっては対応していない場合がある
一括査定の対応エリアは提携先の不動産会社に左右されるため、物件の所在地域によっては利用できない場合があります。
人口の少ない地方ほどその傾向は強く、首都圏など限られた地域しか対応していない一括査定もあります。
仮に対応していても、提携している不動産会社が少なければ一括査定で比較する意味がありません。まずは物件所在地のエリアでどれだけ提携しているか確認してみましょう。
全国幅広く対応している一括査定サイトを利用しよう
一括査定の仕組み上、不動産会社の提携数が多ければ対応エリアも広がります。とくに「全国対応」と宣伝している一括査定を使うと良いでしょう。
例えば、大手一括査定サイトの「イエウール」は提携不動産会社数が2,000社以上で、全国47都道府県すべてで複数社と提携しています。売却成立サポート件数は年間20万件を突破しており、実績も豊富です。
良い不動産会社を見極めるポイント
一括査定を申し込んだら、そのなかから最終的に契約する1社を選ばなければいけません。
良い不動産会社を見極めるポイントは、次の5つがあげられます。
- 宅建業に必要な資格を持っている
- プライバシー保護を徹底している
- 説明が丁寧
- 対応がスピーディー
- 担当者との相性が良い
これらのポイントをしっかりとチェックすれば、優良な不動産会社を選ぶことができるでしょう。
それぞれのポイントを、詳しく解説していきます。
宅建業に必要な資格を持っている
不動産業を営む業者は、国土交通大臣もしくは都道府県知事から宅地建物取引業の免許を受ける必要があります。
都道府県知事の免許を受けた業者は該当する1つの都道府県内、国土交通大臣の免許を受けた業者は複数の都道府県で営業が可能です。
免許は「〇〇県知事免許(◯)第〇〇号」というように表記され、各社のホームページなどで確認できます(間の括弧内には免許の更新回数を記載)。
このような免許が確認できない不動産会社は違法業者の可能性があるので、契約しないよう注意しましょう。
プライバシー保護を徹底している
プライバシー保護は企業として最低限遵守すべきルールですが、管理が不十分な悪質業者も一部存在します。こうしたコンプライアンス意識が足りない業者だと、顧客情報の流出などでトラブルになるかもしれません。
最低限、ホームページなどでプライバシーポリシー(プライバシー保護に関する自主ルール)を公表している不動産会社へ依頼するようにしましょう。
また、一般財団法人日本情報経済社会推進協会の「プライバシーマーク(Pマーク)」が認定・付与されている業者は、個人情報を保護する適切な体制が整っているので安心して契約できます。
プライバシーポリシーやプライバシーマークのない不動産会社は、リスクを避けるためにも契約しないことをおすすめします。
説明が丁寧
優良な不動産会社であれば相談者とは丁寧な態度で接しますし、査定額は「なぜこの金額になったのか」をわかりやすく説明できます。
態度が高圧的だったり、説明が不明瞭で納得できなかったりした場合、その不動産会社は悪質業者の可能性があります。
不動産業者と契約すると購入希望者の対応もお願いすることになるため、担当者の人となりは重要です。トラブルなく売却するためにも、説明が丁寧な不動産会社を選ぶようにしましょう。
対応がスピーディー
こちらの質問や要望への対応速度も、優良な不動産会社を見極めるうえで重要です。
簡単な質問に対していつまで経っても返答を返さない業者や、売却活動の報告を怠る業者は少なくありません。こうした悪質業者に任せていても不動産は売れないため、早めに見切りを付けることが大切です。
不動産会社を切り替えるだけで、1年以上売れなかった物件が売れるケースもあります。対応に不満がある場合は、積極的に別の不動産会社へ切り替えていきましょう。
担当者との相性が良い
説明の丁寧さや対応スピードとも共通しますが、担当者との相性の良さも重要なポイントです。
担当者が誠実で真摯な態度であればスムーズに売却できる可能性は高くなりますし、自分自身も気持ちよく売却活動をおこなえます。
不動産売却も突き詰めれば「人と人のやり取り」なので、担当者の人柄が良いほど成約もしやすくなります。
感覚的にでも「信頼できる」と感じた担当者であれば、納得のいく不動産取引ができるでしょう。
まとめ
不動産の一括査定は、物件の価格相場を把握し、より好条件で売却するために便利なサービスです。
しかし、一括査定を利用しただけで確実に売れるわけではありません。各査定額や売却条件を比較し、優良な不動産会社を選ぶことが大切です。
「査定額が不自然ではないか」「担当者の対応に問題はないか」など、自分自身の目でしっかりと見極めましょう。
注意点やデメリットを押さえたうえで一括査定を利用すれば、きっと相性の良い不動産会社が見つかります。予想以上に高額・短期間で売れる場合もあるので、ぜひ活用してみてください。
