突然訪れる親の死によって残されてしまった家の処分方法に困っている方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな親の家の処分にお困りの方へ向けて、家の処分方法や活用方法について紹介していきます。
どのような流れで不動産の処分が進んでいくのかは、不動産の売却処分が初めての方にとっては難しい点が多いでしょう。そのため、不動産を処分する際の一連の流れや、事前に準備しておくべきことについても触れていきます。
また、誰も住まなくなった親の家の処分を後回しにすることで起こるリスクについても併せて確認しておきましょう。
親の死後の家の処分方法はどのようなものがある?
親の死後に残された家は、どのように処分すればいいのでしょうか。
一般的には、
- 最も一般的な売却処分
- 処分せずそのまま活用
などの処分方法が考えられます。
ここでは、上記2点に関して詳しく解説していきます。
①最も一般的なのは売却処分
親の死後に残された家の処分方法として、最も一般的なのは売却処分です。
売却処分といっても、
- 現状引き渡し
- 解体後の引き渡し
- リフォーム後の引き渡し
など複数の方法が考えられます。
ここからは、上記3点の売却処分方法について解説していきます。
1.現状引き渡し
現状引き渡しとは、解体やリフォームなどをせず不動産をそのままの状態で売却することを指します。
現状引き渡しをするメリットとして、
- 解体・リフォーム費用がかからないこと
- 固定資産税が上がる心配がないこと
の 2点が挙げられます。
現状引き渡しは、不動産をそのままの状態で売却できるため、解体・リフォーム費用を削減できるほか、土地を住宅用地として扱えるため、売却できるまでの期間に固定資産税が高くなる心配はありません。
一方で、現状引き渡しには以下2点のデメリットも考えられます。
- 買い手が付きにくくなることもある
- 契約不適合責任を問われる可能性がある
まず、親の死後に残された家が築年数の古い家であったり、損傷の激しい家だった場合、そのままの状態では売却が難しいこともあります。
また、シロアリの被害や建物の躯体にある損傷などを隠して、売買契約を結んでしまうと、のちに買主から契約不適合責任を問われる可能性があります。
建物や土地などに、契約時に明記されていなかった不具合が発見されると、売主は損害賠償の支払いや契約の解除を求められることもあるので現状引き渡しの際は十分注意しましょう。
2.解体して引き渡す
親の家の処分をする際は、解体して更地の状態で引き渡す方法もおすすめです。
得に、建物の躯体部分が傷んでしまっている場合や長く空き家として放置されてしまっている家は、建物を解体して売却するといいでしょう。
更地で売却することによって、以下のようなメリットがあります。
- 買い手が付きやすくなる
- 空き巣や放火などの被害リスクが減る
- 相続空き家の3000万円特別控除が適用される
建物を解体して更地にすることで、住居以外にも事務所や店舗など、さまざまな建築プランが建てられるため、買い手が付きやすくなる傾向があります。
また、売却まで空き家の状態で保有している場合は、空き巣や放火などの被害も考慮しなければいけませんが、更地の場合はそのような心配がなくなります。
さらに、解体して更地で売却することで、「相続空き家の3,000万円特別控除」が使える可能性もあります。
一方で、更地売却にもデメリットがあり、
- 解体費用がかかる
- 固定資産税が高くなる
などは更地売却のデメリットと言えるでしょう。
3.リフォームして引き渡す
親の死後に残された家は、リフォームして引き渡す処分方法もおすすめです。
親の使用していた家は、相続した時点で老朽化が進んでいたり、現代の生活様式に合わない部分があることも多いでしょう。
そのため、トイレを和式から洋式へリフォームしたり、バスルームやキッチンをリフォームするだけでも家の需要は高まります。
さらに、リフォームの際に耐震性や耐久性の補強を合わせて行えば家の安全性を高めることもできるでしょう。
売却処分をする場合だけでなく、その後相続人が使用する場合であってもリフォームしておくことで、清潔感があり使いやすい家にすることができます。
- 名義人の変更に伴って発生する登録免許税・・・課税標準額×税率=登録免許税額
- 売買契約書のやり取りに付随して発生する印紙税・・・400~60万円
- 売却後に発生する譲渡所得税・・・税額は所有していた期間により異なる
②処分せずそのまま活用する選択肢もあり
親の死後に残された家は、処分せずにそのまま活用するという選択肢もあります。
特に、
- 賃貸物件としての運用
- 相続人がそのまま利用
などの活用方法がおすすめです。
4.賃貸物件として運用する
親の死後に残された家は、賃貸物件として運用することもおすすめです。
特に、
- 将来的に実家に戻る予定のある方
- 立地がファミリー層に人気のエリアにある家の場合
- 家賃相場から収益を上げられる可能性が高いと判断できる場合
このような場合は、賃貸物件として親の家を活用することに向いています。
マンションの一棟貸やアパートの賃貸運営とは異なり、実家の家は一部屋のみの貸し出しになるため、入居者管理の手間をかけずに継続的な家賃収入を期待することができます。
しかし、初期投資や入居者がいない間のランニングコストがかかる点はデメリットとして挙げられるため、長期的な目で親の家の活用方法を検討してみましょう。
5.相続人がそのまま利用する
親の家の活用方法として、相続人がそのまま利用することも一つの方法です。
相続した実家に住むことで、
- 家賃やローンがかからない
- 思い入れのある実家に住める
などのメリットを得ることができます。
特に、相続人の職場から近かったり、便利な立地にある場合などは実家を利用することが有益と言えるでしょう。
ただし、親が亡くなった事によって、相続税を支払わなければならない場合は、実家を売却することで納税資金へ回すこともできますので、状況に応じて実家へ住むか否か検討してみましょう。
親の家の処分を後回しにすべきではない理由2つ
親の家の処分を後回しにすると、次のようなリスクが発生します。
- 空き家が近隣住民の迷惑となる
- 固定資産税が大きな負担となる
ここでは、上記2点について詳しく解説していきます。
①空き家が近隣住民に迷惑がかかる可能性があるから
親の残された家を放置した結果、空き家化した家が近隣住民へ迷惑をかけてしまう可能性があります。
親の生前に親と同居している人がいなかった場合、今まで親が住んでいた家は空き家状態となってしまうでしょう。
空き家となった場合、定期的に家の手入れを行わないと、老朽化し、家屋の崩壊や地域の景観を損なうなどして、近隣住民へ迷惑がかかることが考えられます。
また、不法侵入や不法投棄など、空き家で犯罪行為が起こる可能性もありますので、空き家対策としても、家の後始末は早めに行う必要があります。
②固定資産税が大きな負担となるから
親の家の処分を後回しにすることで、固定資産税の負担が大きくなってしまうことも考えられます。
親の死後に残された家が放置されると、周囲に悪影響を及ぼす「特定空き家」とみなされる可能性があります。
「特定空き家」に認定されると、固定資産税の優遇装置が適用されず、今までの約6倍の固定資産税を支払わなければいけません。
「特定空き家」に指定される条件としては、
- 倒壊等保安上危険となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われておらず著しく景観を損なっている状態
- 衛生上著しく有害となるおそれのある状態
親の家の処分までに行うべきこと4つ
親の家の処分までに行うべきこととして、以下の4つを頭に入れておきましょう。
- 遺言書の有無を確認し、節税対策をする
- 計画的に処分するためのスケジュールを立てる
- 遺された遺品を整理する
- 誰も住まない家は相続人が管理する
①遺言の有無を確認し節税対策をする
親の死後、残された家の処分を進める前に遺言書の有無を確認しておくことで、大きな節税対策となります。
不動産を売却した際の利益に対して課税される譲渡所得税は、「 不動産売却価格-不動産を買った金額-不動産売却にかかった経費-特別控除 」で税額が計算されます。
しかし、不動産を購入した際の金額が不明だった場合、不動産売却価格の5%を取得費とみなされます。
この概算取得費が実際の購入金額より大きい場合はいいですが、実際の購入金額の方が大きい場合は、余計な税額を支払わなければいけなくなります。
そのため、親の遺言や資料などを確認し、正確な不動産情報を把握しておくことで、大きな節税対策となるでしょう。
②計画的に処分するためのスケジュールを立てる
親の家を処分していくためには、計画的なスケジュールをたてる必要があります。
親の家の処分を進めていくには、遺品の整理から、処分、相続人の話合いや形見分けなど、やらなければいけないことはたくさんあります。
さらに、売却やリフォームなどを行う場合は、業者とやり取りしながら長期的な目で進めていかなければいけませんので、計画的にスケジュールを立てておくことで、スムーズに家の後始末を終わらせられるでしょう。
③遺された遺品を整理する
親の死後に残された家を処分する際、遺された遺品も整理する必要があります。
遺品整理は、遺品の確認から仕訳、処分まで大変な作業となりますので、
- トラブルを避けるため、家族で話合いの上遺品整理を進める
- 遺品の処理が大変な場合は遺品整理業者に依頼してもいい
この2点について抑えておきましょう。
トラブルを避けるため家族で話合いの上遺品整理を進める
遺品を誰が持つか、誰が相続するかということに関しては、家族同士でトラブルになりやすいため、家族で話合いをした上で遺品整理を進めていきましょう。
親の家の片付けをする際に一番大変な点は、一人で勝手に処分を進められない点です。
親の意向や家族の意見を聞かずに処分を進めてしまうと、後々トラブルとなってしまう可能性があります。
そのため、
- 個人的に欲しいものはあるか
- 遺品の処分にかかる費用はどう分担するか
- 誰かに任せる場合後から文句を言わないか
を家族全員で話合いながら遺品整理を進めていくといいでしょう。
遺品の処理が大変な場合は遺品整理業者に依頼してもいい
親の家にある遺品が大量に残っていたり、大きい物が残っている場合は、遺品整理業者へ依頼するのがおすすめです。
遺品整理業者に依頼をすると、不用品の買取を一括で受注してくれたり、遺品の写真を送付するだけで一括見積を出してくれる業者もいます。
インターネットで親の家のある自治体の名前と「遺品整理」というワードを一緒に検索すると、たくさんの遺品整理業者がでてくるので、遺品整理にかかる労力を減らしたい場合は、業者への依頼も検討してみましょう。
④誰も住まない家は相続人が管理する
親の死後に遺された家に誰も住む予定がない場合は、家の相続人が管理を行わなければいけません。
親の家の管理として行うことは、
- 通気、換気
- 通水
- 清掃
- 雨漏りの有無、カビの確認
- 建物の損傷状況の確認
- 郵便物の整理
などが挙げられます。
ここでは、親の家の管理をすべき理由として以下2点から解説していきます。
- 価値保全・空き家トラブルを避けるため管理すべき
- 空き家管理サービスの利用を検討してもいい
価値保全・空き家トラブルを避けるため管理すべき
親の遺した家は、価値保全・空き家トラブルを避けるためにも管理が必須です。
だれも住む人がおらず空き家となった建物は、損傷が進むスピードがとても早いことが特徴として挙げられます。
損傷の激しい空き家や手入れに行き届いていない空き家には、不法投棄や不法侵入、不法滞在などのリスクもありますので、将来的に売却や活用することを検討している場合は、しっかりと管理をしておきましょう。
空き家管理サービスの利用を検討してもいい
親の家が遠くにある場合や、仕事の都合でなかなか家の管理ができないという方は、空き家管理サービスの利用も検討してみましょう。
空き家の管理は、月に1回程度は行わなければいけませんが、空き家管理サービスを利用すると、1万円~1万5千円ほどで月一回の巡回を行ってくれます。
中には、月一回の点検・管理作業後にメールで空き家の状況を教えてくれる業者もいるので、インターネットで「空き家管理サービス」と検索して、自分にあった業者を見つけてみましょう。
相続した親の家を売却処分する際の基本的な流れ
親の家を相続して売却処分しようとする場合は、以下のような流れで進んでいきます。
- 不動産業者の選択・査定を行う
- 不動産の価格を決定・売りに出す
- 購入希望者と売買契約を結ぶ
- 不動産を引き渡す
ここでは、上記の流れについて詳しく解説していきます。
①不動産業者の選択・査定を行う
親の死後に残された家を売却処分する場合、まずは不動産業者を選んで査定をしてもらうところから始まります。
不動産を売却する場合、事務処理や複雑な手続きを踏む必要があるため、不動産会社に売却依頼するのが一般的です。
まずは、複数業者に査定を出してもらい、物件の価値がどれほどあるのかを確認しておきましょう。
インターネット上では、複数業者へ一括で査定を依頼できるものもありますので、売却処分を急いでいるかたは、一括査定を利用するのもおすすめです。
家の売却を有利に進めたい場合は、
- 不動産会社の信頼度
- 不動産会社の得意分野
- 提案力や販売力の有無
などを参考に、不動産業者を選択しましょう。
②不動産の価格を決定・売りに出す
依頼する不動産業者が決定したら、次は自分の売却方針を元に、売却活動を進めていきます。
売却方針とは例えば、
- どのくらいの価格で売却を希望しているのか
- いつまでに処分をしたいのか
など、具体的な希望価格と希望売却時期について不動産へ伝えておきましょう。
希望価格は、高く設定してしまうと物件がなかなか売れない可能性がありますし、逆に安く設定してしまうと損になってしまう可能性もあります。
そのため、不動産の希望価格を設定する際は、複数の不動産業者に出してもらった査定価格を参考に、慎重に設定するようにしましょう。
③購入希望者と売買契約を結ぶ
売りに出した家に購入希望者がついたら、買主との売買契約締結へ進みます。
売りに出した不動産に購入希望者が現れると、希望者から購入申込書が届き、金額やその他の条件についての交渉をすることになります。
基本的には、不動産会社が代わりに交渉してくれるので、買主からの希望条件を基に折り合いをつけていきましょう。
④不動産を引き渡す
売買契約の取り交わしが成立したら、いよいよ不動産の引き渡しに移ります。
不動産を引き渡すまでには、
- 不動産登記の準備
- 物件が契約条件どおりかの確認
- 退去や解体など
を済ませておく必要があります。
不動産登記とは、土地や建物に設定されている抵当権を消し、買主に所有権を移転する手続きで、基本的には不動産会社が手続きを進めてくれます。
そのため、家の確認・退去の準備が整えば、鍵や備品を買主に渡すことで手続きは完了します。
まとめ
親の死後に残された家の処分方法としては、売却処分やその他の用途での活用などが考えられます。
空き家の処分を後回しにしてしまうと、近隣住民へ迷惑がかかったり、固定資産税の負担が大きくなるなどのデメリットが出てくるため、親の家の処分は早めに進めていきましょう。
また、家の処分に伴って発生する遺品の整理は家族間でのトラブルを避けるためにも家族で話し合いをしながら計画的に進めていきましょう。
