実家が処分できないとお困りの方は、実家を保有し続けるリスクや処分できない原因について考えてみましょう。
今回の記事では、処分が難しい実家でも処分できる方法を6選紹介し、実家の処分に困らないために事前にできる対応策も4選紹介していきます。
親の死後に残された実家や長く空き家となってしまっている実家は手早く処分して、保有し続けるリスクを減らしましょう。
処分できない実家を保有し続けるリスク
処分できない実家を保有し続けるリスクとして、固定資産税が6倍になってしまうことが考えられます。
固定資産税が6倍になる
実家を保有し続けることで固定資産税が6倍となってしまうのは、
- 更地で保有すると固定資産税が6倍になる
- 特定空き家に認定されると固定資産税が6倍になる
の2点の要因が考えられます。
更地で保有していると固定資産税は6倍に
処分できない実家を更地で保有していると、固定資産税は6倍となるので注意しましょう。
住戸が建っている住宅用地には、固定資産税の特例措置があり、土地に建物が建っていることで課税標準額が1/6となる措置がとられています。
しかし、土地に建物が建っておらず、更地として保有しているとこの固定資産税の特例措置が適用されないため、実家が建っていた頃に比べて税額が6倍となってしまいます
そのため、実家を更地にして売却できる可能性が低い場合には、固定資産税の負担を考慮してから建物の解体を進めていきましょう。
特定空き家に認定されると固定資産税は6倍に
処分できない実家を放置して特定空き家に認定されてしまっても、固定資産税が6倍となってしまうので注意しましょう。
特定空き家とは、倒壊の危険や衛生上の危険がある空き家に対して適切な管理を促すために定められた措置で、自治体の指導に逆らった場合には50万円以下の過料のほか、固定資産税の軽減措置から除外されてしまいます。
軽減措置から外れると固定資産税は以前の6倍となってしまうので、特定空き家の認定条件である、
- 倒壊や保安上危険となる状態
- 衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われず景観を損なう状態
- 周辺の生活環境に保安上影響がある状態
に当てはまらないように、実家の手入れを定期的に行っておきましょう。
実家を処分できないのはなぜ?考えられる理由2つ
実家を処分できない原因として、
- 不動産業者が取り扱えないほど価値が低い物件だから
- 流通しにくい地域にある物件だから
という2点が考えられます。
①不動産業者が取り扱えないほど価値が低い物件だから
実家が不動産業者が取り扱えないほど価値が低い物件だった場合、処分をするのは難しくなるでしょう。
物件が資産価値があるかどうかは、「土地の価値」と「建物の価値」の2つの要素から判断され、一戸建ての場合は「土地の価値」、マンションの場合は「建物の価値」が重視されます。
「土地の価値」
「土地の価値」は、「路線価×敷地面積×掛け目(補正率)」の計算式で算出されます。
路線価とは、土地が面している道路の価格のことで、1年間の地価変動や専門家の意見を元に、毎年変動しています。
また、掛け目とは固定資産税を算出する際の補正率のことを指し、土地の高低差や形状などを元に行政機関が定めているものです。
特に一軒家の場合は、土地が使いやすい形状になっているかが不動産の価値として重要で、正方形や道路との接触面積の広い長方形などは需要も高く売りに出しやすいでしょう。
一方で、旗竿地と呼ばれる竿に旗を付けたような形の土地やいびつな形をした土地は、利用方法が限られているため需要も低く処分が困難となってしまうことも多いです。
「建物の価値」
建物の資産価値は、立地やデザイン、管理状態、築年数によって決まります。
「建物の価値」を計算で算出すると、「再調達価格×延床面積×(法定耐用年数-築年数)/法定耐用年」の計算式で計算され、再調達価格と法定耐用年数は以下の表の通りです。
構造 | 再調達価格 | 法定耐用年数 |
---|---|---|
木造 | 12~16万円/㎡ | 22年 |
鉄骨造 | 15~18万円/㎡ | 34年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | 18~20万円/㎡ | 47年 |
木造建築で法定耐用年数の22年を超えている物件は、資産価値も低いため、需要も低く処分するのが困難な可能性があります。
②流通しにくい地域にある物件だから
実家が、不動産の流通しにくい物件であった場合も実家の処分に苦戦してしまうでしょう。
例えば、市街化調整区域という都市開発が制限された区域では、原則として家や商業施設が建てられず、不動産の売却価格も低くなってしまうのが一般的です。
農家の家庭や古くから建つ家屋の場合、この市街化調整区域に実家が建っていることも多く、その需要の低さから処分が難しいということもあります。
しかし、
- 安価で土地を購入できること
- 静かな環境を得られること
- 固定資産税の負担が小さいこと
などの理由から市街化調整区域にある不動産を求めている人もいるため、需要が全くないというわけではありません。
もし、実家の価値を詳しく知りたい場合は、実家の建つ地域に詳しい不動産業者へ見積もりを出してもらうといいでしょう。
売れない実家の処分方法6つ
売れない実家の処分方法としては、
- 売却価格を2割以上値下げする
- 解体して更地で売却する
- 実家のある地域に強い不動産へ買取をお願いする
- 空き家バンクに登録して他の人に活用してもらう
- 賃貸や貸店舗・宿泊施設などに活用する
- 相続放棄
の6つ方法が考えられます。
①売却価格を2割以上値下げする
実家の売却価格を2割以上値下げすると、処分が難しい物件でも売却処分が可能でしょう。
特に、戸建ての場合は売り出し価格が成約価格より2割ほど高くなっていることが統計的に分かっており、過去10年間の平均成約価格は、売り出し価格の80%となっています。
つまり、売主が設定している価格は買主の求めている価格より高くなってしまっていることが分かります。
そのため、売り出し価格を2割下げることで処分が難しかった実家でもスムーズに売却を進める事ができるでしょう。
②解体して更地で売却する
処分できない実家は、解体して更地で売却することもおすすめです。
特に、築年数の古い物件の場合、建物を取り壊して更地にした方が、利用用途が広がり需要も高まります。
例えば、注文住宅や店舗付き住戸、貸店舗を建てたい人や不動産会社にとって、建物が解体された更地はとても扱いやすいです。
ただし、解体費用は、木造住宅の場合、1坪4万円~5万円ほどかかり、一般的な30坪程度の住宅であれば、120~150万円はかかってしまいます。
実家の築年数が古く解体費用を工面できる状態であれば、更地にして売却処分することも検討してみましょう。
③実家のある地域に強い不動産へ買取をお願いする
実家のある地域に強い不動産へ買取をお願いすることも、実家の賢い処分方法です。
不動産へ買取を依頼するとは、自分の保有している物件を不動産会社へ直接売却することを指します。
一般的には、不動産会社を通して買い手を探す「仲介」の形が一般的ですが、「買取」にすることで、以下のようなメリットを得る事ができます。
- 仲介で売れない物件も買取対応してくれる
- いち早く売却でき現金化できる
- 契約不適合責任が免責される
- 仲介手数料がかからない
不動産業者が直接買取した物件は、業者自身で取り壊しをして転売をするのが一般的なので、地域の需要や活用方法を熟知した不動産業者へ買取依頼をして、素早く実家の処分を進めてみましょう。
④空き家バンクに登録して他の人に活用してもらう
実家が処分できない場合は、空き家バンクに登録して、他の人に活用してもらうこともおすすめです。
空き家バンクとは、自治体が運営している不動産情報サイトのことで、所有している物件を貸したい人・売りたい人と借りたい人・買いたい人をを繋げてくれるサービスです。
不動産が通常取り扱わないような物件も空き家バンクには掲載されており、掘り出し物を目当てにサイトの物件を物色している人も多くいます。
例えば、古民家カフェを開きたいと考えている人や安く物件を購入したいと考えている方もいるでしょう。
不動産買取に比べ、実家の処分までに長い時間を要する可能性もありますが、ぜひ他人に実家を活用してほしいと考えている方は、空き家バンクへの登録も検討してみましょう。
⑤賃貸や貸店舗・宿泊施設などに活用する
処分できない実家は、賃貸や貸店舗・宿泊施設などに活用してみるのもおすすめです。
空き家を活用する例としては、以下のようなものが考えられるでしょう。
- 戸建の賃貸として経営する
- 更地にして駐車場として経営する
- 民泊として経営する
- 貸別荘として経営する
- 古民家カフェとして貸店舗にする
特に、賃貸や民泊として経営する場合は初期費用が安く収まり、収入も入りやすいでしょう。
将来的には実家に戻る予定の人や空き地を何かに活用したいと考えている方は、実家の活用も検討してみてはいかがでしょうか。
⑥相続放棄
実家の処分方法として、相続放棄をすることも一つの方法です。
ここでは、相続放棄する際の注意点を解説していきます。
相続放棄する際の注意点
実家を相続放棄しようと考えている場合は、以下2点の注意点をおさえておきましょう。
- 相続放棄をしてもしばらくは実家の管理義務が残る
- 申し立て費用や管理費用が大きな出費になる
相続放棄をしてもしばらくは実家の管理義務が残る
実家の相続放棄をしても実家を管理する義務は残るため注意しましょう。
被相続人が所有していた実家などの不動産を相続放棄すると、一般的にその不動産は国に継承されますが、すぐに国のものになるわけではなく、以下のようなさまざまな手続きを進める必要があります。
- 相続放棄の手続きを進める
- 相続人全員が裁判所へ申し立てをする
- 相続財産管理人を選任する
- 相続財産が国のものになる
これらの手続きが全て終わるまでだいたい9カ月ほどかかりますが、相続した不動産の管理は相続人が行わなければいけません。
そのため、相続放棄の手続きを初めてすぐに不動産を手放せるわけではないことを覚えておきましょう。
申し立て費用や管理費用が大きな出費になる
相続放棄をすると申し立て費用や管理費用が大きな出費となるので注意しましょう。
相続した不動産を国へ帰属させるには、弁護士や司法書士などの第三者を「相続財産管理人」として立てて、申請を行わなければいけません。
この申し立てには、数十万円以上の費用が発生し、出費が負担となってしまうこともありますので、相続放棄するかどうかは事前によく考えておきましょう。
実家の処分に困らないためにやっておくべきこと
実家の処分に困らないためにやっておくべきこととしては、
- 親の生前に実家の処分方法について話し合っておく
- 実家の価値を把握しておく
- マンションの場合管理費等の滞納がないか確認しておく
- 定期的なメンテナンスを行い実家を綺麗に維持しておく
以上4点が考えられます。
親の生前に実家の処分方法について話し合っておく
実家の処分に困らないためにも、親の生前に実家の処分方法について話し合っておくといいでしょう。
親の生きている間に、親の死後の話はしづらいこともありますが、親が認知症を発症してしまったり、急死してしまった場合親の意思を尊重することが難しくなってしまいます。
そうなる前に、
- 任意後見人を選んでおく
- 形見分けを行っておく
任意後見人とは、将来自身の判断能力が劣った時に財産管理や身上監護をお願いする人のことで、家族や親戚などを選ぶことが多いです。
任意後見人を決めておくことで、親の死後も実家の相続や処分について戸惑うこともなくスムーズに処分が進められるでしょう。
また、親の死後に実家を処分する際にネックとなることの一つに家財処分がありますが、親の生前に形見分けを行っておくことで、兄弟間でトラブルなく家財処分を進められます。
実家の価値を把握しておく
実家の処分に困らないためには、実家の価値を正しく把握しておくことも重要です。
実家の価値を把握するには、実家のある地域に詳しい複数の不動産に見積もりを出してもらうと良いでしょう。
また、実家が市街化区域にあるか市街調整区域にあるかも重要なポイントになるため、分からない場合は、一緒に不動産へ聞くことをおすすめします。
もし、実家が市街調整区域に会った場合は、土地として売り出しても新たに建物を建築することが難しいため、建物をそのまま残して売却する必要があります。
しかし、建物が築年数の古いものだったり価値が低い場合はそのまま売却するのも困難なこともあるため、実家の適正価値を把握してから、処分方法を模索していきましょう。
マンションの場合管理費等の滞納がないか確認しておく
実家がマンションの場合は、管理費等の滞納がないかを確認しておきましょう。
マンションの管理費や修繕積立金などが滞納されていた場合、それらを清算してからでないと売却することができません。
もし、滞納金額が大きく清算が難しい場合には、売却ではなく相続放棄を選択する必要があります。
親が最近まで住んでいた場合は問題ないかもしれませんが、しばらく空き家となっていた実家などは、滞納がないかを注意して確認しておきましょう。
定期的なメンテナンスを行い実家を綺麗に維持しておく
定期的なメンテナンスを行い、実家を綺麗に維持しておくことも実家の処分に困らないためにできる1つの方法です。
実家のメンテナンスを行わず放置したままにしていると、いざ処分しようとしたときに、修繕費用や家財撤去費用などが大きな出費となってしまいます。
そのため、実家にまだ人が住んでいる場合も、空き家の状態になっている場合も定期的なメンテナンスを行って突発的な多額の出費を抑えることができるでしょう。
また、実家を綺麗な状態で維持しておくことで、資産価値を維持することにも繋がり、売却処分をする際などに有利に働くのでおすすめです。
まとめ
実家が処分できないからといって、そのまま保有し続けると固定資産税が6倍となってしまうリスクがあります。
実家が処分できない理由としては、物件の価値の低さや地域の不動産の流通の少なさが関係していることが多いです。
売却価格を下げたり、不動産へ直接買取を依頼するなど、処分方法はたくさんあるため、実家の性格な価値を把握して処分できなかった実家を手放しましょう。
