原則、土地を所有していると固定資産税が課せられますが、墓地・保安林・国有林など、所有していても固定資産税のかからない土地も一部存在します。
こうした固定資産税のかからない土地を被相続人が所有していた場合でも、通常の土地と同様に「相続登記」をおこなうことで、問題なく相続できるのでご安心ください。
ただし、固定資産税がかからない土地でも、相続時に相続税・登録免許税がかかるため、まったく税金をかけずに相続できる訳ではありません。
いくら固定資産税がかからないとはいえ、相続にかかる税金が勿体ないと感じる場合、土地を相続した後に売却して現金化してしまうのも一つの方法です。
相続時に固定資産税のかからない土地とは?
相続で取得できる土地の中には、固定資産税のかからない土地も一部存在します。
毎年1月1日時点における土地・建物の所有者に課される税金です。
相続時に固定資産税のかからない土地とは、大きく分けて以下の2種類です。
- 課税評価額が30万円未満の土地
- 墓地・保安林・国有林などの土地
それぞれのケースを順番に見ていきましょう。
1.課税評価額が30万円未満の土地
1つ目は、課税評価額が免税点である30万円を下回る土地です。
固定資産税額を算出するための指標で、固定資産税評価額と同等です。
課税評価額が低い不動産の場合、固定資産税が免除される制度のことです。
課税標準額が免税点に満たない場合、土地・建物に固定資産税は課税されません。
種類 | 課税評価額 |
---|---|
土地 | 30万円未満 |
建物 | 20万円未満 |
ただし、所有する不動産が同じ市区町村内に複数ある場合、合計の課税標準額で判断されるため注意しましょう。
例えば、課税標準額20万円の土地A・課税標準額15万円の土地Bを相続する場合、合計の課税評価額は35万円となるので、固定資産税が課税されてしまいます。
2.墓地・保安林・国有林などの土地
2つ目は、墓地・保安林・国有林など、地方税法で指定された土地です。
具体的には、以下のような「公共の用に供する土地」が該当します。
- 墓地
- 公共の保有林
- 国有林
- 私道など
ちなみに「相続する土地が固定資産税の課税対象であるか?」を知りたい場合、市区町村役場に問い合せることで確認できます。
固定資産税のかからない土地にも相続税はかかる
固定資産税のかからない土地にも、相続税はかかるため注意しましょう。
厳密には「相続税」と「登録免許税」という、2種類の税金を負担する必要があります。
しかし、相続税は後述する方法で負担を抑えることができるのでご安心ください。
この項目では、土地を相続した際にかかる税金について解説します。
土地の相続時にかかる2種類の税金
土地を相続する場合、以下2種類の税金を負担しなければなりません。
税金の種類 | 解説 |
---|---|
相続税 | 相続時に取得した財産へ課される税金 |
登録免許税 | 相続登記の手続き時に国へ納める税金 |
これらの税金は、固定資産税のかかる土地・かからない土地のどちらも共通です。
それぞれの税金について、1つずつ見ていきましょう。
1.相続税
1つ目は、遺産を相続した際、取得した財産にかかる「相続税」です。
相続税とは?
被相続人の遺産を相続した場合、相続人・受遺者に課される税金です。
土地の相続にかかる相続税は、土地の価格に応じて税率が異なります。
土地の価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
〜1,000万円 | 10% | なし |
1,000〜3,000万円 | 15% | 50万円 |
3,000〜5,000万円 | 20% | 200万円 |
5,000万円〜1億円 | 30% | 700万円 |
1億〜2億円 | 40% | 1,700万円 |
2億〜3億円 | 45% | 2,700万円 |
3億〜6億円 | 50% | 4,200万円 |
6億円〜 | 55% | 7,200万円 |
土地の相続税を算出する際は、相続税評価額を参考にしますが、これは固定資産税評価額と同等と考えて問題ありません。
相続税は現金による一括納付が原則とされるため、金融機関の窓口や税務署で支払う形式で納付するのがベストでしょう。
2.登録免許税
2つ目は、遺産を相続した際、相続登記という手続きにかかる「登録免許税」です。
登録免許税とは?
不動産の所有権を登記する場合などに、国へ納付しなければならない税金です。
土地の相続にかかる登録免許税の税額は、以下の計算式で求められます。
固定資産税評価額×0.4%
登録免許税の納付方法は、銀行などの金融機関で現金を支払った後、その領収書を登記申請書に貼り付けて法務局に提出する形になります。
土地の相続時にかかる税金を安く抑える方法
土地の相続時にかかる税金を安く抑えるには、2種類の方法があります。
- 相続税の控除・特例を受ける
- 相続放棄で土地を手放す
各種控除・特例を利用すれば、相続税を抑えつつ土地を相続できますし、相続放棄をおこなえば、相続税・登録免許税を一切負担せずに済みます。
それぞれの方法を順番に解説していきます。
1.相続税の控除・特例を受ける
1つ目は、相続税の控除や特例を受ける方法です。
相続税には、各種控除や特例が用意されているので、これを用いることで節税できます。
相続税を安く抑えるには、以下のような控除・特例があります。
種類 | 減額される金額 |
---|---|
基礎控除 | 3,000万円+600万円×法定相続人の数 |
贈与税額控除 | 相続から3年以内の生前贈与で支払った贈与税額 |
配偶者控除 | 最大1億6,000万円または法定相続分の金額 |
未成年控除 | 満20歳になるまでの年数×10万円 |
障害者控除 | 満85歳になるまでの年数×10万円 (一般障害者) |
満85歳になるまでの年数×20万円 (特別障害者) | |
小規模宅地等の特例 | 相続する宅地の330㎡までの部分の評価額を80%減額 |
2.相続放棄で土地を手放す
2つ目は、相続放棄で土地そのものを手放す方法です。
被相続人の遺産を一切相続せず、財産・負債をすべて手放すことです。
相続放棄をおこなえば、土地を含めた被相続人の遺産を一切相続しないので、相続税も負担せずに済みます。
ただし、相続放棄をおこなうと、土地以外の財産も相続できない点に注意しましょう。
例えば、被相続人の遺産が2,000万円の土地と3,000万円の負債だったとします。
この場合「2,000万円の土地だけ相続して、3,000万円の負債は放棄する」といった相続はできません。
被相続人の抱える負債が土地を含めた遺産を上回る場合でない限り、相続放棄をおこなうことで損をしてしまう結果となります。
被相続人が負債を抱えている場合でも、土地を売却すれば返済資金に充てられるので、基本的には土地ごと遺産を相続することをおすすめします。
固定資産税のかからない土地を相続する方法
固定資産税のかからない土地も、通常の土地と同じ方法で相続できます。
固定資産税のかからない土地を相続する方法は、以下の3ステップです。
- 相続人全員で土地の分け方を話し合う
- 必要な書類・費用を準備する
- 法務局へ相続登記を申請する
具体的には、相続人全員で土地の分け方を決めた後、必要書類・費用を用意して「相続登記」という手続きを法務局でおこなう形になります。
それぞれの手順を、順番に解説していきます。
【手順1】相続人全員で土地の分け方を話し合う
まずは、相続する土地の分け方を相続人全員で話し合いましょう。
「遺産分割協議」という話し合いをおこなうことで「誰が土地をどの程度相続するか?」といった土地の分け方を相続人全員で決めます。
相続発生時に相続人全員で遺産の分け方について、協議・合意することです。
ただし、遺産の分け方は必ず相続人全員で決定する必要があり、1人でも反対している場合は決定内容が無効にされてしまいます。
ですので、遺産分割協議によって土地の分け方を決めた後は、必ず「遺産分割協議書」を作成して、相続人全員が納得している事実を残しておきましょう。
【手順2】必要な書類・費用を準備する
続いて、相続登記で必要となる書類・費用を準備しましょう。
ここで解説する必要書類・費用を準備してから、実際に相続登記を手続きします。
相続登記における必要書類は以下のとおりです。
- 相続登記の申請書
- 被相続人の戸籍謄本
(出生から死亡まで) - 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 相続人全員の印鑑証明書
- 不動産の固定資産評価証明書
- 不動産の全部事項証明書
これらの必要書類は法務局や市区町村役場で取得できます。
加えて、相続登記で必要となる費用は以下のとおりです。
種類 | 金額 |
---|---|
登録免許税 | 固定資産税評価額×0.4% |
登記事項証明書の発行手数料 | 約600円 (不動産1個あたり) |
戸籍謄本などの発行手数料 | 合計3000円程度 |
司法書士への手数料 | 約6万円 (司法書士に依頼する場合) |
司法書士へ相続登記を依頼することもできますが、6万円程度の手数料がかかるため、なるべく自分で手続きすることをおすすめします。
もし必要書類・費用がわからない場合、最寄りの法務局に問い合わせれば教えてもらえるので、気軽に相談してみるとよいでしょう。
【手順3】法務局へ相続登記を申請する
最後に、法務局に「相続登記」を申請しましょう。
被相続人の死亡後、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する手続きです。
わかりやすくいうと、被相続人の遺産を相続人が引き継いだ事実を法的に証明する手続きが「相続登記」になります。
法務局へ相続登記を申請するには、以下3種類の方法があります。
- 法務局の窓口に持参する
- 法務局へ郵送する
- オンラインで申請する
はじめて相続登記をおこなう場合、さまざまな質問をしながら手続きができるため、窓口での申請がおすすめです。
法務局への申請が済むと、平均1週間程度で相続登記が完了して、正式に土地の所有権が被相続人から相続人に移転します。
相続した土地の固定資産税を安くする方法
下記に該当しない土地を相続する場合、固定資産税を負担しなければなりません。
- 課税評価額が30万円未満の土地
- 墓地・保安林・国有林などの土地
相続した土地の固定資産税を安くしたい場合、以下2種類の方法があります。
- 住宅用地の特例を利用する
- 新築住宅に対する軽減措置を受ける
それぞれの方法を、1つずつ具体的に見ていきましょう。
1.住宅用地の特例を利用する
1つ目は「住宅用地の特例」を利用する方法です。
土地が住宅用地の場合、税負担が1/3または1/6に軽減される特例です。
住宅用地の特例を利用すれば、土地の固定資産税を最大1/6まで減らせます。
土地の面積 | 固定資産税 |
---|---|
〜200㎡の部分 | 1/6 |
200㎡〜の部分 | 1/3 |
例えば、土地面積が300㎡の住宅用地であれば、200㎡までの部分は固定資産税が1/6まで減額されて、残りの100㎡は固定資産税が1/3まで軽減される仕組みです。
地域によっては、固定資産税だけではなく都市計画税がかかるケースもありますが、都市計画税も住宅用地の特例が適用されるため税金が安くなります。
ただし、住宅用地の特例を受けるには、土地上に居住用の建物を建設する必要があるため、後述する「新築住宅に係る税額の減額措置」と併用するとよいでしょう。
2.新築住宅に係る税額の減額措置を受ける
2つ目は「新築住宅に係る税額の減額措置」を受ける方法です。
新築住宅の場合、建物にかかる固定資産税が3〜5年間は1/2に軽減される特例です。
2022年3月31日までの期間内に新しく建てられた住宅のみ適用される特例で、一戸建ての場合は3年間、マンションの場合は5年間、建物の固定資産税が1/2に減額されます。
加えて、新築の長期優良住宅であれば、一戸建ての場合は5年間、マンションの場合は7年まで、固定資産税が1/2に減額される期間が延長されます。
土地の固定資産税を抑える制度ではありませんが、相続した土地に住む場合に「住宅用地の特例」と併用することで、土地と建物の固定資産税を大幅に抑えることが可能です。
まとめ
課税評価額が30万円以下の土地や、墓地・保安林・国有林など地方税法で指定された土地の場合、相続しても固定資産税が一切かかりません。
これらの土地を相続する場合も、通常の土地と同様の方法で相続可能です。
ただし、固定資産税のかからない土地とはいえ、相続する際は相続税・登録免許税を負担しなければならないため注意が必要です。
被相続人の抱えるマイナスの負債がプラスの遺産を上回らない限り、土地ごと遺産を相続しておいて、必要がなければ土地のみを売却する方法をおすすめします。
不動産業者に相談すれば「土地を相続するべきか?」といった悩みに対するアドバイスも貰えるので、売却を検討していない人もまずは一括査定で価格を確認してみるとよいでしょう。
