市街化調整区域とは、自治体による建築制限がある区域です。何も制限がない土地と比べて価格が安い反面、原則として建物を建てられないというデメリットがあります。
また、既存の建物があったとしても、自由に増改築できません。
市街化調整区域にある土地の特徴を知らなければ、購入したあとで「思い描いた家を建てられない」「購入時に考えていた活用ができない」など後悔することになります。
そこで、この記事では市街化調整区域の特徴と、購入時に注意すべきポイントを解説します。
この記事を参考に、後悔のない土地購入をおこないましょう。
市街化調整区域とは建築制限がある土地のこと
「市街化調整区域」とは、都市計画法第7条第3項に基づいて定められた「市街化を抑制すべき区域」です。
「市街化」とは、道路や公園、下水道などのインフラを整備し、住居や商業施設などを建設して「市街地」を形成することを指します。
そのため「市街化調整区域」では市街地とならないように原則、建物を建てられないように建築制限が課せられています。
次の項目で、市街化調整区域の特徴を説明します。
市街化調整区域の特徴
市街化調整区域の大きな特徴は次の4つです。
- 土地の価格が安い
- 閑静な環境
- スーパー・学校・駅などの施設が近くにない
- インフラ設備が整っていない地域もある
次の項目から1つずつ詳しく解説していきます。
1.土地の価格が安い
市街化調整区域の土地は原則、建物を建築できない制限があります。土地活用の幅が狭められるため、価格は安いです。
建築制限がない同じ広さの土地と比べて半分ほどの価格になる場合もあります。
また、売買される土地の価格だけでなく、固定資産税評価額も安いです。
そのため、固定資産税も低く抑えられます。
なお、市街化調整区域の土地に都市計画税は課税されません。
土地に課税される税金の種類が少ないことも市街化調整区域にある土地の特徴です。
2.閑静な環境
市街化調整区域はコンビニやスーパー、商業施設など人が集まる建物は原則、建設されません。
そのため、交通量も少なく、閑静な環境が特徴です。
近隣の家とは距離があるので、生活音が気になることもまずありません。
落ち着いた生活を実現できるでしょう。
3.スーパー・学校・駅などの施設が近くにない
市街化調整区域は「農村部」と呼ばれるような農林漁業がおこなわれている区域が多いです。
そのほか「自然環境や景観を保全する地域」として定められていることもあります。
そのような環境ですので、市街化調整区域にある土地の近くには、スーパーや学校、駅などの施設が建てられていない場合が多いです。
4.インフラ設備が整っていない地域もある
市街化調整区域は住宅地ではありません。
地方自治体もインフラ設備の整備に積極的な投資はおこなっていないので、電気やガス、下水道などがない地域もあります。
なお、そのような地域にある土地を購入してインフラ設備を整える場合、費用は原則、自己負担です。
市街化調整区域にある土地を購入する際には、必ずインフラ設備の有無および、整備費用について確認してください。
市街化調整区域と市街化区域の違い
市街化調整区域の対になる区域として「市街化区域」があります。
市街化区域は「すでに市街地を形成している区域」および「おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」です。
地方自治体は、市街化を促進するために、人が生活しやすいようインフラ整備に積極的な投資をおこなっています。
住宅や商業施設も建てやすく、建築制限のない土地が多いことが特徴です。
そのため、建物を建てる際に「原則、地方自治体の許可が必要かどうか」が大きな違いとなります。
また「都市計画税が課税されるかどうか」という税制面でも違いがあります。
都市計画税は、市街化区域での道路や公園、水道などの整備に関する都市計画事業・土地区画整理事業の費用に充てる目的税です。
したがって、市街化調整区域の土地・建物に都市計画税は課税されません。
市街化調整区域で土地を購入する際の確認事項
ここまで説明してきたように、市街化調整区域の土地には原則、建物を建設できません。
しかし、区域によっては市街化区域とほとんど変わらない土地活用ができる場合があります。
以下の項目から、市街化調整区域の土地を購入する際に最低限、確認すべき項目を説明します。
土地の地目
市街化調整区域の土地を購入する際には、その土地の「地目」を確認することが大切です。
地目には「宅地」「田」「畑」「山林」「原野」「牧場」「雑種地」など多くの種類があります。
そのなかでも、住宅用に土地を購入しようと考えているのであれば「宅地」の土地にしましょう。
市街化調整区域に指定される日よりも前から宅地であれば、建物の増改築が認められる可能性が高いからです。
市街化調整区域に指定される前の建物か(建物が現存している場合)
購入を考えている土地上にある建物の建築年月日が、市街化調整区域に指定される前か確認しましょう。
市街化調整区域に指定されるよりも前であれば、建設許可要件は厳しくありません。基本的に、増改築も建替えも認められます。
もしも、建築年月日がわからない場合は、固定資産税課税台帳に記載されていますので、役所で確認してください。
不動産会社が売り出している土地であれば、その不動産会社に問い合わせれば教えてもらえるはずです。
区域指定
地方自治体によっては、市街化調整区域の中に、誰でも一戸建て住宅や兼用住宅などの建物を建てられる区域を定めています。そのことを「区域指定」といいます。
購入したい土地が区域指定内にあれば、その土地でできることは、市街化区域の土地とほとんど変わりません。
想定どおりに土地活用できる可能性は高いでしょう。
区域指定された地域にある土地か確認するには、地方自治体の「都市計画課」に問い合わせることが確実です。
市街化調整区域の土地を購入する際の注意点
続いて、市街化調整区域の土地を購入する際の注意点を3つ説明します。
- 建物は原則建てられない
- 住宅ローンの利用が難しい
- 改築や建て替えには地方自治体の許可が必要
「購入したいのに購入できない」「購入したのに想定した活用ができない」などの事態に陥らないためにも、しっかりと把握しておきましょう。
建物は原則建てられない
市街化調整区域の土地には建築制限が課されており、原則として、新しく建築物を建てることはできません。
建物を建てるためには、地方自治体の都市計画法に基づく許可が必要です。
例外として「農業を営む人の住宅」「農業用倉庫・温室」「公民館」「非常災害のため必要な応急措置として建築する仮設住宅」は許可なしでも建築できます。
ただし、上記のような建築物でも一定の条件が定められています。
土地を購入する前に、具体的に建てたい建物を地方自治体の都市計画課に伝え、建築が認められるか確認するようにしてください。
住宅ローンの利用が難しい
マイホームを購入する際には、住宅ローンを利用することが一般的です。
しかし、市街化調整区域でマイホームを購入する場合には、住宅ローンの審査が通らない可能性が高いです。
その理由は、担保価値がほとんどないからです。通常、住宅ローンでは購入する不動産を担保に設定します。
これは、契約者が万が一、住宅ローンを返済できなくなったときに、担保に設定した不動産を金融機関が売却することで返済に充てられるようにするためです。
ところが、市街化調整区域は建築制限がかけられているため市場価値が低いです。
買主を探すことも難しく「売却して残債の返済に充てる」という担保に設定する目的を達成できない恐れがあります。
そのため、市街化調整区域の不動産は、そもそも審査対象外としている金融機関が多く、住宅ローンの利用が難しいです。
改築や建て替えには地方自治体の許可が必要
市街化調整区域ですでに建物が建っていれば、そこは自由に建築できると思われるかもしれません。
しかし、市街化調整区域においては、改築や建て替えの際にも地方自治体の許可を受けなければならない場合があります。
申請を出せば認められることが多いですが、絶対ではありません。
購入後に改築や建て替えを検討しているのであれば、事前に地方自治体の都市計画課へ相談しましょう。
なお、建て替え後の床面積の合計が、建て替え前の1.5倍以下であり、構造と用途も同じで一定の条件を満たせば、地方自治体の許可を受けることなく建て替えできます。
具体的な条件は地方自治体によって異なる場合があるので、上記の場合でも必ず確認してください。
まとめ
市街化調整区域の概要と購入時の注意点について説明しました。
市街化調整区域は建築制限がある地域のため、土地を購入しても活用が難しいです。購入時に想像していた建物を建てられないかもしれません。
同じような理由で、市街化調整区域にある土地の売却も難しいです。価格を下げても買主が見つからない恐れがあります。
そのため、市街化調整区域の土地を売買する際には、不動産会社選びが重要です。
スムーズに取引を進めるためにも、市街化調整区域について詳しい知識と実績のある不動産会社に依頼しましょう。