「実家を相続したけれど不要だ」「思い入れがないわけではないが、使い道がないので処分したい」と考えている人は多いでしょう
不動産は所有しているだけでも固定資産税がかかり、維持・管理の手間もかかります。
そのため、今後も使用しない家なら、なるべく早く処分することをおすすめします。
そこで、この記事ではいらない実家の対処法とそのまま所有し続けた場合のデメリットについて解説します。
また、実家を売却するようであれば、複数の不動産会社を比較してみることが大切です。一括査定を利用して、物件を高く評価してくれる不動産会社を調べてみましょう。
相続した実家がいらない場合の対処法
相続した実家がいらなければ「売却」か「寄付」が主な対処法です。
家の立地や状態にもよりますが、まずは現金を手に入れられる「売却」を検討するとよいでしょう。
売却が難しければ「寄付」を検討します。
相続後に実家を売却する
相続後に実家を売却する際には、下記3つの方法があります。
- 仲介で売却する
- 空き家バンクに登録する
- 買取業者へ売却する
仲介での売却は、3つの方法の中で売却額が高額になる可能性が高いです。
速やかに売却したければ、買取業者への売却がおすすめです。
それぞれの方法について解説します。
仲介で売却する
仲介は一般的な不動産の売却方法であり、最初に考えつく売却方法でしょう。
不動産会社と媒介契約を交わすことで、不動産会社は仲介業者として買主を探します。
購入希望者が現れて売買条件を交渉し、お互いに納得できれば取引成立です。
仲介での売出価格は原則、売主が決められます。
市場価格を参考にするので、このあと紹介する空き家バンクや買取業者への売却よりも、売却価格は高くなりやすいです。
ただし、相続した実家が田舎にあり、築年数も古ければ、市場価格では買主がつきにくいことに注意が必要です。
その場合は、売出価格を下げなければなりません。
しかし、売出価格を下げると不動産会社のモチベーションが下がる恐れがあります。
仲介手数料が売却価格の一定割合と設定していることがほとんどのため、売出価格が下がると、それだけ不動産会社としての利益が少なくなるからです。
そのため、売出価格が非常に安くなる場合は、仲介手数料とは別に報酬を支払う契約とするなどの工夫が必要になるでしょう。
空き家バンクに登録する
実家が郊外にある場合、売却価格は低く、売却までに時間もかかります。
不動産会社の利益となる仲介手数料も低くなるので、割にあわないと判断されて、積極的に売却活動を進めてもらえない恐れがあります。
そのような場合に「空き家バンク」はおすすめです。
空き家バンクとは、自治体が空き家の売却または賃貸などを希望する所有者の申し込みに基づいて情報を公開し、空き家を利用したい人とのマッチングを図る制度です。
空き家を利用したい人がピンポイントで見つかるメリットがある一方で、そもそも空き家バンクを確認する人が少ないため、売却までに時間がかかるデメリットがあります。
なお、自治体は原則、所有者と利用希望者の連絡を調整するのみで、交渉・契約は当事者間でおこなう必要があります。
また、すべての自治体で空き家バンクが提供されているわけではありません。
そのため、まずは実家の自治体に空き家バンクの制度が提供されているかを確認しましょう。
買取業者へ売却する
仲介や空き家バンクを利用した売却が難しい場合は、買取業者への売却する方法もあります。
買取業者へ売却する大きなメリットは、売却できるまでの期間が短いことです。
査定から早ければ1週間以内に現金化できるケースもあります。時間がかかっても1ヶ月程度です。
しかし、買取業者への売却は、売却価格が仲介よりも下がることがデメリットです。
また、買取業者によって査定価格は異なります。できるだけ高額で売却するためにも、複数の買取業者へ査定を依頼しましょう。
寄付する
郊外にある実家は活用が難しく、買取業者にも買取を拒否されるケースがあります。
そのようなときは売却を諦めて「寄付」による処分を検討しましょう。
主な寄付先は「個人」「自治体」「法人」の3つです。
「寄付」ですので、お金のやり取りは発生しません。
しかし、法人への寄付は「みなし譲渡」として所得税が課税されるので注意が必要です。
次から、それぞれの寄付先について説明します。
個人へ寄付する
個人へ寄付する場合、受け入れてくれる可能性が高い相手は隣地の所有者です。
「物置を設置するためのスペースがほしい」「子どもやペットの遊び場として庭を広くしたい」などを隣人が考えている場合には、寄付を受けてもらいやすいです。
実家はそのまま渡すのか、解体するのか、解体する場合に解体費用はどちらが負担するのかなど、寄付条件については柔軟に交渉します。
そして、寄付の合意を得られたら、あとから土地を返されないためにも贈与契約書を作成しておきましょう。
このとき、所有権移転登記も忘れずに手続きしてください。
所有権移転登記をしないままだった場合、書類で確認できる所有者はあなたのままです。固定資産税の請求書が届き続けますし、物件の管理責任もあなたが負うことになります。
所有権移転登記の手続きは分からなくても、法務局へいけば相談しながらおこなえます。
とはいえ、時間も手間もかかるので、司法書士のような専門家へ手続きを依頼すると簡単で確実です。
自治体へ寄付する
不動産の固定資産税は自治体の貴重な収入源です。不動産を適切に維持するために管理費も必要です。
そのため、実家がいらないからといって、自治体へ寄付しようとしても、拒否されることがほとんどでしょう。
しかし、寄付を受け入れている自治体もあります。
とくに避難所や公園など公共性が高い方法で活用しやすい立地にあれば、寄付を受け入れてもらいやすいです。
まずは、自治体の担当窓口へ相談することをおすすめします。相談するときは、不動産の情報がわかる公図や登記簿謄本、物件と周辺の写真を準備しておくとスムーズに進みます。
法人へ寄付する
保養所や教育施設として活用できたり、文化的に価値ある場合は法人が寄付を受け入れてくれる可能性があります。
上記のような活用や売却も難しい場合は、寄付を拒否される恐れもあるので、寄付先として考えている法人へ問い合わせてみてください。
また、法人へ不動産を寄付する際は、あなたに「みなし譲渡所得税」が課税される恐れがあります。
これは「不動産を時価で売却して現金化したあと、その現金を法人へ寄付した」とみなされるためです。
取得時から寄付時までの値上がり益が「譲渡所得」として、所得税の課税対象となります。
なお、寄付先が公益法人であり「教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献など」に寄与する場合、一定の要件を満たせば国税庁長官の承認を受けて非課税となる特例があります。
承認特例の適用を受けるには、寄付の日から4ヶ月以内に承認申請書を提出する必要があるので、忘れずに対応しましょう。
相続した実家をそのままにするデメリット
相続した実家を処分する主な方法は、ここまで説明したとおりです。
スムーズに売却できれば何も問題ありませんが、売却が難航し、寄付も思ったように進まない場合、煩わしくなって実家をそのままにしようと思うかもしれません。
しかし、実家をそのままにするデメリットは大きいです。
次の項目から具体的なデメリットを4つお伝えします。
毎年固定資産税がかかる
不動産は使用有無に関わらず、所有しているだけで毎年、固定資産税・都市計画税が課税されます。
一般的な広さの戸建てであれば、10万円~15万円程度と極めて高額というわけではありませんが、所有している限り毎年納税しなければなりません。
例えば、10年所有し続けると100万円~150万円を固定資産税・都市計画税として納税することになり、負担は大きいです。
特定空き家に指定されると固定資産税が最大6倍になる
実家の敷地には住宅用地の特例が適用されるので、固定資産税は軽減されています。
しかし、実家を空き家のまま放置して「特定空き家」に指定されると、固定資産税の特例措置が適用されなくなります。
「特定空き家」と指定されるのは、実家が下記のような状態にある場合です。
- そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となる恐れがある
- 擁壁が老朽化し危険となる恐れがある
- そのまま放置すれば著しく衛生上有害となる恐れがある
- 適切な管理がおこなわれていないことにより著しく景観を損なっている
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切
特例措置の適用対象外になると固定資産税は最大6倍になり、毎年の負担額が増大します。
近隣住民からの苦情につながる
実家をそのままにしていると景観が悪化するほか、庭の雑草が伸び放題になって害虫や獣害が発生したり、犯罪者の拠点として使われる恐れがあります。
その結果、近隣住民からの苦情につながります。
近隣の住宅を傷つけたり、通行人にケガをさせてしまった場合などは、空き家の所有者であるあなたが損害賠償責任を負う恐れもあります。
維持・管理費がかかる
「特定空き家に指定されること」「近隣住民からの苦情」のどちらもを避けるには、実家を適切に維持するための管理が必要です。
具体的には、家の換気や雑草の除去、損壊箇所の修繕などです。
実家が近ければ、それほど負担には感じないかもしれませんが、遠方にある場合には交通費と時間の負担が大きいです。
管理会社へ委託することもできますが、別途で管理費がかかります。
問題を次の世代まで負わせることになる
いらない実家をそのままにしていると、あなたが亡くなったときは原則、子どもが相続します。
放置された実家を相続しても使い道はほとんどありません。
そうなれば、子どもも同じように放置するしかなく、子どもから孫へと問題は引き継がれていくことになります。
いらない実家を相続放棄すべきケース
いらない実家をそのままにすると、ここまで説明したようなデメリットがあります。
そのため、相続が発生した時点で実家を使わないことが決まっていれば、相続放棄を検討してもよいでしょう。
ただし、相続放棄では「実家のみ相続放棄する」ということはできません。すべての財産を相続するか、放棄するかのどちらかです。
そこで、ここではいらない実家を相続放棄した方がいいケースを3つ説明します。
- 相続する金融資産が500万円以下
- 相続財産全体に占める不動産評価額の割合が大きい
- 売却できる見込みがない
1つずつ説明します。
相続する金融資産が500万円以下
現金や預貯金、株式などの金融資産が500万円以下の場合は、相続放棄した方がよいケースが多いです。
なぜなら、実家を相続しても固定資産税や管理費で500万円程度は10年~20年でなくなってしまうからです。
以降はあなたの持ち出しとなって、家計を圧迫しかねません。
相続財産全体に占める不動産評価額の割合が大きい
2つ目は、相続財産全体に占める不動産評価額の割合が大きい場合です。
具体的には、不動産評価額が相続財産の2割を超えていると、相続放棄を検討した方がよいでしょう。
それほどの割合を占めていると、維持・管理費のみで残りの金融資産を使い果たす恐れがあります。
売却できる見込みがない
相続する実家を売却できる見込みがない場合、そのままあなたが所有し続けることになります。
そうなれば、金融資産の金額に関わらず、いずれは維持・管理費の方が上回ってしまうため、相続放棄を検討した方がよいケースです。
売却できるかどうかは、近隣の売却状況を確認したり、不動産会社に売却価格の査定を依頼して判断するとよいでしょう。
実際におこなわれた不動産の取引価格は、国土交通省が提供している「土地総合情報システム」で確認できるので、参考にしてみてください。
相続人全員が相続放棄すると「相続財産管理人」の選任が必要
相続放棄は、相続人それぞれで判断します。
そのため、あなたが「相続放棄」しても、他の相続人は財産を相続できます。この場合は、残った相続人の誰かが実家を管理するので問題ありません。
しかし、相続人全員が相続放棄した場合は、実家を相続する人がいなくなります。
そのような場合、最後に相続放棄した人が放棄したあとも管理しなければなりません。
もしも、適切に管理しなかった結果、他者にケガを負わせる被害を与えた場合は損害賠償請求される恐れがあります。
そのようなリスクを避けるため「相続財産管理人」の選任が必要です。
相続財産管理人は家庭裁判所でおこないます。必要書類など手続きの詳細は、家庭裁判所に問い合わせてください。
また、相続財産管理人には報酬が発生し、その報酬は相続財産から支払われます。
相続財産が少なく、相続財産管理人への報酬が不足しそうな場合は「予納金」が必要になります。
金額は家庭裁判所が事案の難易度に応じて決めます。20万円~100万円が一般的です。
相続財産管理人の選任について不明な場合は弁護士や司法書士などの専門家へ相談しましょう。
いらない実家の処分に困ったら早めに不動産会社へ相談を
いらない実家の主な処分方法は、売却か寄付です。
「自分の状況にあった処分方法がわからない」「売却も寄付も難しそう」など、処分に困った場合は、早めに不動産会社へ相談することをおすすめします。
時間が解決するだろうと思ってそのままにしていても、何も解決しません。
むしろ、この記事で説明したデメリットもあるように、事態が悪化することの方が多いです。
そのため、自分だけでの判断が難しいときは、経験も専門知識も豊富な不動産会社へ適切な処分方法を相談しましょう。
まとめ
いらない実家を相続した場合、そのまま放置しているとさまざまなデメリットが発生します。
無用なトラブルを避け、スッキリとした気持ちで日常生活を送れるように相続が決まったら速やかに、売却や寄付など処分を進めてください。
買取であれば現金化まで早いですが、買取業者によって査定価格が異なります。
高額売却となるように、複数の不動産会社へ一括で査定依頼できるサービスの利用がおすすめです。