共有名義で不動産をもっているものの、共有者と仲が悪く「会いたくない」と思う人は少なくありません。
通常、共有不動産を売却しようと思ったら、共有者との話し合いや、物件引き渡し時の立ち会いが必要となります。
しかし、代理人を立てたり、自分の共有持分だけ売却することで、共有者と会わずに済む方法もあります。
共有持分だけ売却する場合、一般的な不動産会社では取り扱ってもらえない場合もあります。そのため、共有持分専門の買取業者に相談するようにしましょう。
共有持分専門の買取業者なら、高額かつ最短2日でのスピーディーな買取が可能です。
もっとも高く売る方法は共有者と協力して不動産を丸ごと売却すること
共有不動産にはいくつかの売却方法がありますが、もっとも高く売れるのは不動産を丸ごと売却する方法です。
高く売れるに越したことはないため、共有者と協力できるのであれば不動産を丸ごと売却するのがベストでしょう。
しかし、丸ごと売却するには共有者全員の同意と協力が必要です。
共有不動産を所有している人たちの中には共有者間の関係がこじれているケースも少なくありません。
共有者と協力するのが難しい場合には、自分の持分のみを売却することも可能です。
不動産を丸ごと売却する方法に比べると価格は劣るものの、自分の持分のみの売却であれば共有者の同意や協力を得なくても自由に売却することができます。
様々な理由で自分の持分だけ売却する人が増えている
持分のみの売却は珍しいケースではありません。
例えば「共有者の1人が占有しているため自分の持分を売却してしまいたい」「離婚した相手と会いたくない」「共有者が増えすぎて全員と連絡を取るのが困難」などのケースもあり、不要な持分を現金化したい場合や共有状態から解放されたい場合などに自分の持分だけを売却しています。
共有者と会わずに不動産を売却する4つ方法
共有者と会わずに不動産を売却する方法は以下の4つです。
- 自分の持分のみを売却する
- 共有物分割調停で分割してから売却する
- 代理人へ委任して不動産を丸ごと売却する
- 同意を得て持ち回り契約にする
それぞれの方法を詳しく解説していきます。
方法1. 自分の持分のみを売却する
自分の持分のみを売却するのであれば、共有者と会わずに済みますし共有者の同意を得る必要もありません。
この場合、売却相手となるのは「専門の買取業者」か「不動産投資家」のどちらかです。
専門の買取業者への売却
不動産業者のなかには、共有持分の買取りを専門に扱う買取業者があります。
買取業者は仲介業者のように買主を探して仲介するのではなく、買取業者が共有持分を買取ります。
この2つの業者の違いは以下のようになります。
売主と買取業者の二者が売買に関わる。
買主を探すのではなく、買取業者が売主の不動産を買取る。
売主・買主・仲介業者の三者が売買に関わる。
仲介業者は売主から依頼された不動産の買主を探し、不動産売買の仲介をする。
通常の不動産であれば仲介業者に依頼して売却するのが一般的な方法です。
しかし共有持分は通常の市場では需要がないため、買取業者へ依頼した方が効率よく売却できます。
買取業者への依頼から現金化まで最短数日ほどと、スピーディーに売却できるのが魅力です。
不動産投資家への売却
共有持分は不動産投資家へ売却することもできます。
しかし、不動産投資家は買取業者のように会社として存在しているわけではないので、見つけることは困難です。
知り合いに不動産投資家がいたり、知り合いのツテがあったりといった場合でなければ難しいでしょう。
方法2.共有物分割調停で分割してから売却する
共有不動産の共有者は、共有不動産を分割したいと主張できる権利が法律で認められています。
民法第256条
1.各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。(中略)
引用:e-Govポータル「民法第256条」
共有者との関係がこじれているため売却が進められない、共有持分のみの売却では価格が安くなるため避けたいなどの場合は、共有物分割請求を検討しましょう。
共有物分割請求には3つのステップがあり、段階を踏んで進行していきます。
共有者のみで話し合う「共有物分割協議」
調停委員を介して話し合う「共有物分割調停」
共有者のみで話し合う「共有物分割協議」
共有者のみで話し合う「共有物分割協議」からスタートしますが、共有者同士の話し合いで解決しない場合は調停委員を介して話し合う「共有物分割調停」を起こすことができます。
共有物分割請求では共有不動産の分け方が3つあります。
- 共有不動産を物理的に分ける「現物分割」
- 共有者間で金銭を授受する「代償分割」
- 共有不動産を売却して分け合う「換価分割」
①の「現物分割」であれば物理的に分けた後に自由に売却することが可能です。
では不動産をどのように物理的に分けるのかというと、「分筆」という方法があります。
分筆とは土地を共有名義人の数に分けることです。
分筆すると分けた土地にはそれぞれ名義人が登記され、新たな地番が付けられます。
共有状態ではなくなるので共有持分という考えもなくなり、ひとつの土地として自由に扱うことができます。
ひとつの土地として売却できれば、共有持分のみの売却よりも高値がつきやすいというメリットがあります。
②の「代償分割」は他の共有者に代金を支払うことで共有状態を解消する方法です。
例えば不動産を持分1/3ずつ3人で所有しているなら、1人が不動産を全て取得する代わりに他2人に代償金を払います。
代償分割で共有状態を解消すれば単独名義の不動産になるため、不動産の丸ごと売却が可能になり、こちらも共有持分のみの売却より高値がつきやすいというメリットがあります。
共有物分割調停で解決しない場合は「共有物分割請求訴訟」を起こすことができますが、裁判所の判決通りに共有不動産を分けなければいけなくなります。
そのため望んだ分け方にならない場合もあるので注意しなければいけません。
方法3.代理人へ委任して不動産を丸ごと売却する
不動産の売却は、代理人へ委任して丸ごと売却することもできます。
共有者全員の合意を得るところから任せられるので、共有者とは一切関わらずに済みます。
しかし、代理人に委任する場合には以下のことに注意しましょう。
- 信頼できる人を代理人にする
- 委任状の作成をしなければいけない
- 委任状以外にも必要な書類がある
信頼できる人を代理人にする
委任者が指名すれば兄弟でも友人でも代理人になることはできます。
しかし、不動産の売買を任せるわけですから、誰に代理人となってもらうかは慎重に選ばなければいけません。
自分の代わりに共有者と会い売却手続きを進め、代理人の下した決定が自分の下した決定ということになります。
自分の意思と反する決定を下されてしまうとトラブルになりかねません。
そのため、代理人は信頼できる家族や親族を選びます。
例えば、兄弟のAさんBさんCさんで共有しており、AさんがBさんに会いたくないということであればAさんはCさんに委任してBさんとCさんで売却手続きを進めることができます。
または、Aさんの息子であるDさんを代理人に立てて、BさんCさんDさんで売却手続きをすることも可能です。
家族や親族に代理人になってもらうのが難しければ、弁護士や司法書士などの専門家への依頼も検討しましょう。
専門家への依頼は数万円の依頼料が発生しますが、委任状の作成から任せられるのでミスなくスムーズに進められます。
代理人に依頼する場合は委任状を作成する
代理人に依頼する場合は委任状を作成しなければいけません。
委任状には法律で定められたフォーマットはありませんが、有効な委任状とするには押さえておくポイントがあります。
「誰が誰に対して」「どの不動産の」「どのような内容を委任するか」を明らかにします。
不動産会社が委任状のフォーマットを用意していることもあるので、その場合はそれに従い作成しましょう。
委任状以外に必要な書類
不動産の売却を代理人に委任するには、以下の5つの書類が必要です。
- 委任者の実印が押印された委任状
- 委任者と受任者の実印・印鑑証明書
- 委任者の住民票の写し
- 委任者と受任者の本人確認書類
- 売却する不動産の登記事項証明書
①委任状のフォーマットは自由に作成できますが、必ず委任者の実印が押印されていなければいけません。
②委任者と受任者、両方の実印と印鑑証明書が必要です。
委任状には委任者の実印しか押印しませんが、売却手続きには受任者の実印と印鑑証明書も必要なため忘れず用意します。
印鑑証明書は印鑑登録証を役所などに持参して申請すれば数百円で取得できます。
③委任者の住民票の写しも貼付しなければいけません。印鑑登録証と同じく役所などで取得できるので、一緒に取得しておくとよいでしょう。
④委任者と受任者の本人確認書類は、運転免許証やパスポートなどを用意します。
⑤売却する不動産の登記事項証明書も貼付しなければいけません。
委任状には登記事項証明書の通りに不動産情報を記載するので、委任状作成時に登記事項証明書を取得することになります。
取得した登記事項証明書を添付しましょう。
方法4.同意を得て持ち回り契約にする
不動産を売却する方法に持ち回り契約という方法があります。
持ち回り契約とは、不動産会社の担当者が売主と買主の元へ足を運び契約書に署名や押印をしてもらう方法です。
売主と買主の双方、もしくはどちらか一方が契約締結日に立ち会うことができない場合に取られる方法です。
持ち回り契約であれば共有者同士が売買契約日に立ち会わずに済みます。
持ち回り契約の注意点
契約締結日に顔を合わせずに済む持ち回り契約ですが「共有者全員が持ち回り契約にすることに合意している」「買主も合意している」状態でなければいけません。
そして、共有者間で売却の同意を得ていることも前提です。
共有者の同意を得るところから、不動産業者にお願いできるものではないため注意しましょう。
また、不動産業者の担当者は売主と買主の全員から署名・捺印をもらわなければいけません。
共有者が多ければ時間がかかってしまうという点にも注意が必要です。
自分の持分のみを売却するメリット
解説してきたように、共有者と会わずに不動産を売却する方法はいくつかあります。
しかし、調停を起こしたり代理人を立てたりするのは複雑でトラブルが起こりそう、持ち回り契約を希望するも前提となる共有者の同意が得られないなどといった理由から、自分の持分のみを売却する人が多くいます。
持分のみの売却は共有者と会わずに済むだけでなく、以下のようなメリットにも大きな魅力があるからです。
持分売却すればトラブルも買取業者に一任できる
共有者と会わずに売却したいということは、それほどのトラブルを抱えている可能性があります。
しかし持分を売却すれば所有権は買取業者に移行するため、共有不動産に関するトラブル対応は新しい所有者である買取業者に一任できます。
持分を現金化でき、共有状態から解放され、トラブルからも解放されるのは大きなメリットです。
他の共有者には知られずに売却ができる
持分を買取業者へ売却する場合、他の共有者の同意を得る必要はないと解説しました。
さらに、仲介のように広告などを出して買主を探すというステップがないため、他の共有者には内緒で売却することができます。
共有不動産の丸ごと売却で意見が合わず、持分のみを売却しようとしたけれど反対されたなどのケースでも、自ら他共有者に持分売却の話しをしなければ知られずに売却ができます。
まとめ
不動産は丸ごと売却する方法がもっとも高く売れます。
しかし他の共有者との関係が悪い、離婚したなどの理由から共有者と会わずに売却したい場合は、4つの方法から選択して売却できます。
- 自分の持分のみを売却する
- 共有物分割調停で分割してから売却する
- 代理人へ委任して不動産を丸ごと売却する
- 同意を得て持ち回り契約にする
複数の売却方法がありますが、共有者と関わらずにスピーディーに売却できるのは自分の持分のみを売却する方法です。
共有者とのトラブルの程度や売却にかけられる時間があるのかないのかなどの背景も、売却方法の選択に関わってきます。後悔のないよう選択肢を知ったうえで売却に臨みましょう。