空き家の処分には解体費用やリフォーム費用など、多くのお金が必要となる場合がありますが、空き家処分に関する補助金制度を活用すれば、費用を抑えながら空き家の処分を進めることができます。
今回は、空き家処分に関する補助金制度や処分費用を安く抑えるコツなどについて解説していきます。
また、空き家を処分せずに賢く活用するコツも紹介していきますので、保有している空き家の処分・活用方法についての参考にしてみてください。
空き家の処分に関する補助金制度2つ
空き家の処分をするときに活用できる補助金制度は主に、
- 空き家の解体・撤去に対する「空き家解体補助金制度」
- 空き家のリフォーム・回収に対する「改修工事費支援制度」
の2つがあります。
空き家の解体・撤去に対する「空き家解体補助金制度」
空き家の解体・撤去に対する「空き家解体補助金制度」は、地方自治体が空き家を解体する時に要した費用の一部を補助してくれる制度です。
この制度は、都道府県によって詳細な条件が異なっていますが、今回は
- 最大100万円の補助金が支給される神戸市の補助金制度
- 解体費用の1/3が補助される秩父市の補助金制度
の2つの自治体の「空き家解体補助金制度」について詳しく見ていきましょう。
補助金例①神戸市 最大100万円の補助金支給
神戸市では、空き家の解体処分費用に最大100万円の補助金が支給されます。
最大100万円の補助金が支給されるのは、昭和56年5月以前に着工された建物で、
- 一部腐敗や損傷のある空き家
- 幅員2m未満の道路のみに接っしている、もしくは面積60平方メートル未満の土地に建つ家屋
このどちらかを満たす物件の解体が対象となります。
原則敷地全体を更地の状態にすることが条件となっているため、建物の一部分だけ残したいという方はこの補助金制度を利用できません。
補助金例②秩父市 解体費用の1/3の補助金支給
埼玉県秩父市では、解体費用の1/3、上限50万円の補助金が支給される「空き家解体補助金制度」があります。
この補助金が支給される条件として、
- 特定空き家に認定されていない住宅
- 昭和56年5月31日以前に建築された住宅
- 1年以上空き家の状態である住宅
- 5年以内に市の補助金を受けていない住宅
- 不動産業者が営利目的で所有する住宅でないもの
などが設定されています。
また、 市税の滞納がないことや建設業法・建設リサイクル法の登録を受けた業者による解体工事が対象となっているなど細かい事項が決められているため、補助金の利用を検討している方は、事前に市のホームページで確認しておきましょう。
空き家のリフォーム・改修に対する「改修工事費支援制度」
空き家関連の補助金制度には、リフォームや改修に対する補助金制度、「改修工事費支援制度」もあります。
ここでは、「改修工事費支援制度」の内容について
- 低所得者向けの物件に改修すると最大100万円の補助金支給
- 制度を受けるために注意すべき3点
の2点に分けて解説していきます。
低所得者向けに改修すると最大100万円の補助金支給
「改修工事費支援制度」は、空き家を低所得者向けにリフォームや改修を行うことで最大100万円の補助金を受け取ることができる制度です。
これは、低所得者世帯の入居を想定した住居改修を促す目的で、「セーフティネット法」の改正によって導入された制度です。
この補助金制度を利用すれば、リフォームにかかるコストを低く抑えることができると同時に、家賃補助による安定収入を得ることができるでしょう。
空き家を運用したいと考えている方や、リフォーム費用を安く済ませたいという方は、「改修工事支援制度」を活用するのがおすすめです。
支援制度の注意すべき適用条件3つ
「改修工事費支援制度」を受ける場合は、以下の3つの適用条件に注意しましょう。
- 低所得者向け物件として登録をすること
- 補助を受けてから10年間は他の入居付を行わないこと
- 入居者の月収が38.7万円以下であること
また、必要最低限の住居空間が必要とされるため、対象の工事の例としては
- 耐震改修工事
- バリアフリー導入工事
- 狭い部屋を拡張するなどの間取り変更工事
などがあります。
空き家を低所得者向け物件として登録するには、空き家のある市区町村の市長、もしくは都道県知事へ登録申請書を提出する必要があります。
低所得者向け物件として登録していながら、高所得者の入居付けを行っていた場合や、制度に頼らずに居住物件を探せる高所得者を入居させていた場合は、制度対象外となってしまうので注意しましょう。
補助金を受けるには空き家のある自治体への申請が必須
空き家処分の補助金を受けるには、空き家がある各市区町村の自治体へ申請する必要があります。
空き家の処分に際して補助金を活用したい場合は、空き家のある各自治体への申請が必要です。
提出方法については、
- 全国の空き家関連補助金や減税制度は検索サイト
- 空き家のある自治体が分かる場合は自治体のウェブサイト
で確認するといいでしょう。
全国の空き家関連補助金や減税制度は検索サイトを確認
インターネット上では、全国の空き家関連の補助金や減税制度を確認できる検索サイトがあります。
例えば、「空き家活用の匠 空き家の補助金・助成金の都道府県別リスト」では、
- 空き家の改修に対する補助金
- 空き家の除去に対する補助金
- 空き家の取得に対する補助金
などを一覧で確認することができます。
また、新規に登録された補助金制度も都道府県別に随時アップされていますので、地域別の最新補助金制度を確認したい方は、上記のサイトを確認してみましょう。
空き家のある自治体が分かる場合は自治体のウェブサイトで確認
補助金を受けたい物件が、どこの自治体に属しているかが分かる場合は、その自治体のウェブサイトを確認してみましょう。
例えば、世田谷区にある空き家の補助金制度を調べたい場合は、「世田谷区 空き家 補助金」とインターネットで検索してみると該当の補助金制度や、問い合わせ先などが確認できる自治体のウェブサイトページが出てきます。
自治体のウェブサイトを見ても内容がよく分からない場合や、もっと詳しく内容を知りたい場合は、自治体の住宅課へ直接問い合わせてみましょう。
また、直接自治体へ問い合わせることで最新の情報を得てそのまま手続きまで進められるので、いち早く補助金を利用したいという方は役所へ直接問い合わせることをおすすめします。
空き家の解体・リフォーム処分にかかる費用
空き家の解体やリフォーム処分にかかる費用相場は、
- 解体費用の相場が、100万円~250万円
- リフォーム費用の相場が、500~2000万円
が一般的です。
空き家の解体費用相場は100万円~250万円
空き家の解体費用相場は、建物の構造によって異なりますがだいたい100万円~250万円ほどとなっています。
構造別に解体費用を詳しく知りたい方は、以下の表を参考にしてみてください。
構造 | 費用相場 |
---|---|
木造 | 3~5万円/1坪 |
鉄骨造 | 5~7万円/1坪 |
鉄筋コンクリート造 | 6~8万円/1坪 |
基本的には、木造住宅の解体費用が一番安く、高度な重機や人手を必要とする鉄筋コンクリート造の住宅は費用が高くなっています。
建物内に家具などが残っている場合は、その分解体費用や処分費用が上乗せされてしまうため、家の解体を考えている方は、工事前に家具を処分しておくことをおすすめします。
空き家のリフォーム費用相場は、500万~2000万円
空き家のリフォーム費用は、500万円~2000万円ほどが相場となっています。
リフォーム内容やリフォーム規模によって費用は大きく変わってきますが、水回りの交換のみのリフォームであれば、50万円~500万円ほどで抑えることも可能です。
中古物件を購入する人は、自分好みの内装にリフォームしたいと考えている人も多いため、空き家をリフォーム後に売却処分したい場合は、高額な水回りのリフォームのみ行っておくといいでしょう。
補助金・支援金を利用した空き家活用のすすめ
空き家は処分するのではなく、補助金や支援金を利用して活用するのもおすすめです。
ここでは、
- 家賃低廉化支援制度で支援金を得ながら活用
- 空き家利活用事業補助金を得て事業に活用
の2点から空き家の活用方法を紹介していきます。
家賃低廉化支援制度で支援金を得ながら活用
「家賃低廉化支援制度」を利用すれば、空き家に入居者を受け入れることで支援金を得ることができます。
「家賃低廉化支援制度」とは、低所得者世帯や高齢者世帯の入居を受け入れることで、物件のオーナーに対して最大月4万円が支給される制度です。
この制度の導入条件として、
- 低所得者・高齢者世帯の入居を受け入れること
- 居住面積が25m2以上であること
- 一定の耐震水準を満たしていること
などがあります。
低所得者や高齢者世帯は、不渡りのリスクや孤独死のリスクが高いため、保証会社や不動産業者から敬遠されていました。
この制度はそのような世帯を救済することが目的ですので、低所得者・高齢者世帯を入居させていることは絶対条件となります。
「家賃低廉化支援制度」を利用したい場合は、空き家を「入居を拒否しない物件」として都道府県に登録をしておきましょう。
空き家利活用事業補助金を得て事業に活用
空き家は、「空き家利活用事業補助金」を得て事業に活用することもできます。
例えば、神奈川県藤沢市では、1年以上使用されていない空き家を利用した地域貢献事業に対して、経費の2/3が補助される「令和2年度藤沢市空き家利活用事業補助金」が設置されていました。
この補助金は上限が100万円で、だいたい10年間継続できる事業が対象となりますが、経費を補助金で賄えるため、空き家の活用方法としておすすめです。
「空き家利活用事業補助金」は自治体によって内容が異なり、同じ自治体でも年度によって内容や条件が変わる場合がありますので、空き家のある各自治体のホームページなどで確認しておくようにしましょう。
また、空き家の利活用に関する相談窓口の設置や、専門家の派遣などを行っている自治体も多くありますので、空き家の活用方法に迷った場合やそのようなサービスを利用してみるのもおすすめです。
地方自治体が行う空き家対策例
都道府県や市区町村などの地方自治体は、さまざまな空き家対策を行っています。
自治体の空き家対策を知ることで、空き家の賢い処分方法や活用方法を発見できるため、今回は、地方自治体が行う空き家対策のうち、
- 空き家の流通・活用の促進
- 空き家対策に対する費用補助や税制優遇
の2つについて解説していきます。
空き家の流通・活用の促進
地方自治体では、空き家の流通や活用に力を入れている自治体が多くあります。
空き家の増加が問題視されている昨今では、地方自治体で
- 空き家の調査や空き家のデータベース化
- 管理されていない空き家を「特定空き家」に指定
- 空き家や跡地の再利用・活用法の検討
- 特定空き家に対する指導や措置
などが行われています。
また、群馬県前橋市を例にとると、
- 空き家利活用センターの設置
- 空き家相談会の実施
- 空き家の借主と貸主のマッチングサービスの実施
などを行い、市内の空き家の増加を防ぎ、既存の空き家が流通するような仕組みが作られています。
そのため、空き家を放置していたり、自治体からの指導が入っているのにそれを放置していたりすると、半年ほどで空き家は自治体によって撤去されてしまう可能性があります。
撤去費用は、空き家の所有者に請求されるため、保有している空き家は放置せず、自治体の窓口へ相談したり、空き家活用のサポートを受けながら、処分を進めていくことをおすすめします。
空き家対策に対する費用補助や税制優遇
地方自治体では、空き家対策のために費用補助や税制優遇措置も行われています。
空き家対策として設置されている補助金は、各地方自治体の計画に沿い、空き家の除却・改修・取得の各段階で補助金を得られるようになっています。
一方で、地方自治体で設置されている税制優遇制度は、相続後3年以内の空き家に対して、譲渡所得税の3000万円特別控除が受けられます。
ただし、メンテナンスの行きわたっていない空き家が譲渡されることを防止するために、物件の耐震リフォーム、もしくは取り壊しが条件となっているので注意しましょう。
また、地方自治体の税制度は、優遇されるものばかりではなく、しっかりと管理がされていない場合にペナルティとなる制度もあります。
例えば、特定空き家に指定された空き家で行政の勧告に従わない場合は、固定資産税の優遇措置が解除され、6倍まで税額が上げられてしまう可能性もあるので注意しましょう。
費用をかけずに処分するなら売却の検討も
費用を掛けずに空き家を処分したい場合には、売却処分も検討してみましょう。
ここでは、
- 空き家をそのまま売却処分すれば費用を抑えられる
- 古家付き土地として売却処分する
- 不動産に買い取ってもらう
以上3つの処分方法について解説していきます。
空き家をそのまま売却処分すれば費用を抑えられる
空き家の状態が良ければ、解体やリフォームなどをせずにそのまま売却処分が可能です。
築年数が浅い場合や耐震性能を満たしている場合は、家を残したまま空き家を売却して解体費用やリフォーム費用を省いて処分する方法がおすすめです。
空き家を解体・リフォームしてから処分しようとすると、解体費用相場は、100万~250万円、リフォーム費用に至っては500万~2000万円もかかってしまいます。
比較的築年数の浅い空き家の処分を検討している方は、処分費用を安く抑えるためにも住戸をそのままの状態で売却処分に進めてしまいましょう。
「古家付き土地」として売却処分する
空き家の状態があまり良くない場合でも、「古家付き土地」として売却処分することもできます。
古家付き土地の売却取引では、家屋は評価されず土地として売買取引が行われる、家屋の撤去や活用などを決めるのは買主となります。
そのため、売主は空き家を解体することで高くなる固定資産税や解体費用を浮かせて空き家を処分可能です。
ただし、売主には物件に対して「契約不適合責任」を負わなければいけないため、空き家売却後の買主とのやり取りを削減したい場合には、責任を免除する形で売買契約を締結することをおすすめします。
不動産会社に買い取ってもらう
売れにくい空き家の場合、不動産会社に直接買い取ってもらう処分方法もおすすめです。
解体やリフォームをせずそのまま売却しようとすると、人気の無いエリアにある空き家や築年数の古い空き家はなかなか買い手がつかないことも多いです。
しかし、不動産買い取りではそのような物件でも販売できるため、手早く空き家を処分したい方にはおすすめです。
ただし、販売価格は通常の5割~8割ほどまで値下がりしてしまうことが多いため、その点は注意しておきましょう。
まとめ
空き家の処分に関する補助金制度には、「空き家解体補助金制度」やリフォームじに利用できる「改修工事費支援制度」などがあります。
補助金を受ける場合は、空き家がある自治体への申請が必要ですが、各自治体のホームページから詳細な内容を確認できるので、申請前にホームページをチェックしておきましょう。
さらに、「空き家利活用事業補助金」を利用すれば、空き家を処分することなく、補助金を得ながら事業を続けていく事も可能です。
空き家の処分・活用の際には、自治体の補助金をうまく活用して、賢く費用を抑えながら処分を進めていきましょう。