築50年の一戸建てでも、売却はできます。
但し、その価値が見いだせるのは土地のみで、建物には価値がないケースが殆どです。では、築50年の一戸建てを売却したいと思ったとき、売却の相場はどのように知ることができるのでしょうか?
この記事では、築50年一戸建ての売却相場を知る方法や少しでも高く売却するためのコツ、売却前に確認しておくことなど、について解説していきます。
築50年の木造一戸建ては売れる
築50年の一戸建てでも、売ることはできます。
築50年となると古い家の部類に入りますが、一般的にこのような古い家は売りづらいと判断されます。その理由は、建物の外装や内装の経年劣化や長年の風雨に耐え忍んだものであるだけに、特に外装などは傷みが激しくなっています。
また、内装も綺麗に使っていたとしても設備は古く、デザインもどこか昭和を感じさせるような古めかしい雰囲気、そしてこれらのメンテナンスや機器設備の交換などに多額の維持費が掛かってしまうためです。
さらに、1981年より前に建てられた住宅は旧耐震基準となっており、耐震性にも不安があります。これらを考慮すると、最新の新築住宅より劣ってしまうことが多々あり、わざわざ中古住宅を購入しようとは思わないのです。
したがって、建物自体に評価を得ることはできず、古家付きの土地として販売されてしまいます。
築50年の一戸建ての価値は、土地代のみ
先述のとおりに、築50年一戸建ての価値は土地代のみです。したがって、土地の広さ・形状と周辺の土地評価により売却価格は決まります。
しかし、築50年の一戸建ての場合、一つ懸念されるのが土地境界の問題です。古い年代に取得した不動産の場合、土地境界が決まっていないことや曖昧なケースがあります。
よって、売却前には敷地に土地境界標が埋め込まれているか、敷地境界が登記されているかを確認する必要があります。また、境界付近に設置されているフェンスや塀なども、どちらの持ち物であるのかを併せて確認しなければなりません。
但し、建物のコンディションが良ければ建物に評価をつけての売却も可能
但し、建物のコンディションが良ければ、建物に評価をつけての売却も可能です。
例えば、直近で外装から内装まで大規模なスケルトンリフォームを行い、新築同然のような状態になっていることや、鉄筋コンクリート造りの家で建物の劣化箇所が少なく、あと数十年以上は居住可能な状態であるときです。
つまり、今すぐにでも入居し生活できるような状態であれば、建物への評価が付くことも十分に考えられます。
一戸建ての売却相場を知りたい時は査定を受けるのが一番早い
一戸建ての売却相場を知るには、不動産会社の査定を受けてしまうのが一番の近道です。査定の受け方は大きく2通りありますが、不動産会社で直接査定を受けたほうが、売却価格以外の部分も知ることができ、より具体的に話しが進みやすくなります。
以下に、下記2通りについてメリット・デメリットを解説します。
- A.不動産会社で査定を受ける
- B.一括査定サイトを利用する
A.不動産会社で査定を受ける
まずは、不動産会社で査定を受ける方法です。これは、街にある不動産会社にお願いをすれば、机上若しくは実査定にて査定を受けることができます。
査定は、不動産会社が客観的な立場から作成するので、周辺事例より物件の優れている点や反対に劣っている点などを把握でき、売却できる見込みがあるかなども総合的に判断できます。
メリット | デメリット |
---|---|
・売却できそうな価格が分かる ・周辺の成約事例を知ることができる ・不動産会社の担当者と話すことで、物件自体の引き合いや売り時、売却方法など具体的な提案を受けられる ・物件の利点や欠点を改めて認識することができる ・売却に掛かる費用やその他に掛かる費用を知ることができる | ・しつこく営業される可能性がある |
B.一括査定サイトを利用する
次に、一括査定サイトを利用することです。
一括査定サイトのメリットは、不動産会社に訪れることなく一度に多くの査定を受けられることです。一括査定サイトを利用することで、周辺にどのような不動産会社があるのかがわかることや、査定を複数社から受けることで査定額には会社毎に多少差があることを実感できます。
一方、一括査定サイトは不動産会社からしつこい電話営業を受けることや、机上査定であるため立地に詳しくない不動産会社から査定が届くこともあります。
メリット | デメリット |
---|---|
・一度に複数社の査定を受けられる ・売却を依頼できる不動産会社を把握できる | ・立地に詳しくない不動産会社から査定が来る可能性がある ・複数社から営業を受ける可能性がある |
不動産会社の対面査定と一括査定サイトを組み合わせることで、相場観を掴むことができます。
不動産会社の査定は、情報を詳細に得られるメリットがある一方、査定を複数受けに行くのは大変です。また一括査定サイトは、詳細な情報を得ることは難しいのですが査定を沢山受けられるので、査定評価のデータを集めることができます。
よって、各々のメリットを組わせれば、査定評価のデータと詳細な情報を得ることができます。どちらもしつこく営業されるリスクはあるのですが、組み合わせることでより精度の高い売却相場を知ることが可能です。
だいたいの相場観でいいなら自分で調べる方法も
先述までは、詳細に売却相場が知りたい場合についてでしたが、そこまで頑張りたくないという人も多いでしょう。そこで、下記は誰でも簡単にだいたいの相場観を調べられる方法となります。
- C.レインズ・マーケット・インフォメーションを利用する
- D.路線価図・評価倍率表で算出する
C.レインズ・マーケット・インフォメーションを利用する
レインズとは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営している不動産ネットワークシステムで、不動産売買・賃貸の情報が網羅されています。
レインズは、会員制で主に不動産業者が利用しており一般公開はされていません。しかし、レインズ・マーケット・インフォメーションは、これまで日本国内で取引された不動産売買の事例を地域ごとに閲覧することができます。
つまり、レインズ・マーケット・インフォメーションを利用すれば、不動産が立地する周辺エリアでの成約事例を調査することができ、売却できそうな相場を把握できます。尚、レインズ・マーケット・インフォメーションでは会員登録などはなく、誰でも簡単に閲覧できます。
D.路線価図・評価倍率表で算出する
路線価図・路線倍率票でも売却相場を算出することができます。
路線価図等は、国税庁のホームページに掲載されています。路線価とは、相続税額算出時に用いるもので、おおよそ公示地価の80%となっています。
よって、不動産が面する路線価を調べ、その路線価を0.8で割ると公示地価が算出できます。公示地価は土地取引の指標となる数値であるので、公示地価に土地の広さを掛けることで売却相場を算出ができます。
尚、公示地価は実勢価格に比べかけ離れていることが多く、あくまで参考的な数値となります。
築50年の一戸建て売却前に確認しておきたいこと
築50年の一戸建て売却前に確認しておきたいことは、たくさんあります。この章では下記4つについて取り上げ解説していきます。
- 建物のコンディションはどうか
- 敷地境界の確定はできているか
- 建物を取り壊し再建築できる物件か
- 相続人全員に売却の許可が取れているか(相続人が複数いる場合)
①建物のコンディションはどうか
一つ目は、建物のコンディションです。具体的には、建物が住める状態か住めない状態であるかを確認します。
建物の傷み具合は目で見える部分から、壁の中や屋根裏、床下など素人では確認しにくい個所もあります。よって、建物が使える状態であるかは「住宅診断」を行うのがおすすめです。
専門家による診断により、床下土台部分の腐食や壁の中のシロアリ、屋根裏の傷みなどを発見できます。また、このまま住める状態であるのか、補修の必要性があるのか、またその費用はどのくらいの見込みであるのかなど、具体的なアドバイスを受けられます。
補修費用によっては、補修し建物を使える状態にすることや、解体前提で古家付きで売却するなど、売却プランも変わってきます。
②敷地境界の確定はできているか
二つ目は、敷地境界が確定されているかです。
土地の取引は、敷地の広さに1㎡あたりの単価を掛けて売却価格を算出します。よって、土地の広さは正確である必要があります。
仮に、土地評価が高い東京都心部などであれば、土地の広さが1㎡ずれるだけで金額が大きく違うこともあります。
敷地境界の確認方法は、まずは境界標が地面に設置してあるかです。敷地の角4点に境界標があれば問題ないかと思われますが、土地取引の場合には後々トランブルとならないように、法務局にある地積測量図と登記簿を見比べながら現地で確認する必要があります。
尚、敷地境界が確定していないときには、境界確定を行います。境界確定とは、隣地との境界を確定させ土地の正確な広さを測量し、登記することです。
境界確定は、土地家屋調査士が行いますが、はじめに仮測量、次に隣地所有者との境界確定の話し合い、続いて確定測量を行い、最後に土地広さを登記します。費用は、土地の形状等により数十万~100万円近く掛かることがあります。
③建物を取り壊し再建築できる物件か
三つ目は、建物を取り壊しても再建築できるかです。
俗に言う再建築不可物件では、既存建物を取り壊してしまうと新たな建物の建設はできません。住宅を建設するには、接道義務を果たす必要があります。
接道義務とは、幅員4mの道路に間口2m以上を確保することです。仮に、再建築不可物件であっても、道路中心線から2mセットバックできる土地であることや、間口を広げられる土地であれば再建築は問題ありません。
しかし、旗竿地のように道路に面する間口が狭い場合には、隣地との関係から間口を広げることが難しく、再建築不可状態を脱却できないこともあります。
よって、接道義務を果たす土地であるのか、またセットバック等により再建築可能となるのかを確認しておきます。
④相続人全員に売却の同意が取れているか(相続人が複数いる場合)
最後に、相続人全員に売却の同意が取れているかです。
相続不動産の売却は、相続登記を行った後に行いますが、売却を行うには相続人全員の同意が必要となります。仮に、一人でも売却に同意しない場合には売却を進めることはできません。よって、売却時は相続人間での話し合いが必要です。
築50年の一戸建てを売却するコツは綺麗に見せること
築50年の一戸建てを売却するコツは、綺麗に見せることです。建物を綺麗に見せることで内見者の印象が良く、売却できる可能性が高まります。
では、建物を綺麗に見せるにはどのような工夫が必要なのでしょうか?
建物を綺麗に見せるためにできる工夫
以下に、建物を綺麗に見せるための工夫を挙げていきます。
- 清潔感を出すために、掃除と消臭を行う
- 家の中の照明は全てつけておく
- 物があれば整理整頓、物が多ければ減らしておく
- 家具をレンタルし、家の中をコーディネートしてみる
①清潔感を出すために、掃除と消臭を行う
一つ目は、徹底的に掃除を行うことです。
内見者は、その家に住むことを想像しながら見学します。家の中が汚いなど清潔感に欠けるような空間に、多額の費用を掛けて購入したいとは思いません。
よって、まずは掃除で綺麗にすること、になります。例えば、家の玄関は内見者が一番先に見るポイントです。玄関まわりに物があれば全て片付け、スッキリとした空間を作ります。
また、水回りなどは水垢やカビなど素人では落としにくい汚れが多いので、ハウスクリーニング業者に依頼し掃除してもらいます。水回りは、直接肌が触れる所でもあるので、より清潔感が求められるからです。
次に、消臭となります。人間は意外と臭いに敏感です。
水回りから発生するカビ臭さ、タバコのヤニ臭さ、エアコンから発生する生乾きのような臭いなど、臭いが染みついているようなケースがあれば、内見前に消臭剤を散布することやアロマなどを設置し、消臭作業を行っておきましょう。
②家の中の照明は全てつけておく
二つ目は、家の中の照明を全てつけておき、明るく見せることです。仮に内見時に暗い部屋を見てしまったら、印象は良くありません。とにかく部屋を明るくし好印象を植え付けることが大事になります。
また、自然光などによる明るさの確保のためには、窓ガラスを事前に拭いておくことや窓を塞ぐような形で物を置かないなど、なるべく部屋が明るくなるような工夫をします。
③物があれば整理整頓、物が多ければ減らしておく
三つ目は先述でも少し触れていますが、物があれば整理整頓、物が多ければ減らしておくことです。一般的に物が多い空間は印象が良くありません。物は極力減らし、整理整頓することで、より綺麗な状態を造ることができます。
④家具をレンタルし、家の中をコーディネートしてみる
最後に、家具をレンタルし家の中をコーディネートしてみることです。今、大手不動産会社では、中古不動産売却時に新築住宅のモデルルームのようにソファーやダイニングセットなどを配置し、売却する方法があります。
イケヤや無印など統一性を持った家具を配置するだけで、建物自体の印象は全く違うものになります。壁紙などもアクセント系で多少リフォームするだけでも、空間演出にもなるので一度試みてみるとよいでしょう。
建物のコンディションが悪ければ解体して更地売却がおすすめ
ここまでは、建物を活かす形での内容でしたが、築50年となると建物の状態によっては、劣化が激しくとても住める状態ではないときもあります。よって、このようなときは、解体して更地にすることがおすすめとなります。
では、更地にするときの注意点とは一体何でしょうか?以下に2点取り上げて解説します。
更地にするときの注意点
住宅があった土地を更地にするときの注意点を、下記に挙げていきます。
- 解体費が掛かる
- 固定資産税が上がる
解体費が掛かる
まずは、解体費が掛かることです。
解体費は、木造一戸建て住宅の場合、坪4万円~6万円が相場と言われています。したがって、30坪の住宅の場合の解体費は、120万円~180万円が相場となります。
尚、解体費は解体のしやすさでも変わってきます。例えば、角地であれば解体に使う重機が敷地に入りやすく、また解体した廃材の搬出はトラックを横付けできます。このことから、解体自体の作業効率は良く、人手と日数を抑えることができることから、解体費用が安くなる可能性があります。
一方、旗竿地のような道路から奥まった土地は重機の搬入が難しいことや、解体した廃材の搬出にもトラックを横付けできないことから効率が悪く、解体自体に人手と日数が掛かります。よって、解体費用が相場より高くなってしまうことがあります。
建物の解体は、相場観を掴みにくい分野ではあるので必ず複数社に見積もりを取りましょう。
固定資産税が上がる
続いて、固定資産税等が上がることです。
住宅用地の固定資産税等は、小規模宅地の特例により減免措置を受けています。固定資産税については、200㎡までの土地については課税標準の1/6、200㎡超の部分については課税標準の1/3に軽減されているのですが、更地にすることでこれらの減免措置がなくなります。
よって、固定資産税は住宅があったときと比べて、約6倍に跳ね上がるので、支払いができるように自己資金を用意しておかなければなりません。
相続した築50年一戸建ての売却時に適用できる特例について
相続で売却した一戸建てには、税制の特例を受けられることがあります。この章では、相続した築50年の一戸建てを売却したときに適用できる特例について解説します。
空き家の3,000万円特別控除
空き家の3,000万円特別控除とは、空き家を相続にて取得した場合に、相続開始から3年経過する日が属する年末までに一定の要件のもと売却すると、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例です。
尚、空き家には定義があります。例えば、相続開始の直前まで被相続人が一人で居住していたことや、引き渡しの日までに耐震リフォーム若しくは更地にすることです。
また、この制度を利用するにはさまざまな条件があるので、詳細は税務署等に問い合わせるのがよいでしょう。
相続税を取得費に加算できる特例
相続により取得した不動産を、その相続があった日の翌日から、相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に譲渡した場合、取得費に以下の式により計算した金額を加算できます。
- 譲渡所得 総収入金額―(取得費+相続税の取得費加算額+譲渡費用)
- 取得費加算額の算出方法 相続税額×譲渡した財産の価額÷(相続税の課税価格+債務控除額)
まとめ
築50年の一戸建てでも、売却は可能です。但し、一般的には土地のみの評価となりますが、建物にリフォームを施しているなど直ぐにでも居住できるような状態であれば、建物に価値を付けることができます。
尚、売却相場を知るには不動産会社の査定と一括査定を組み合わせることで、より精度の高い情報を得ることができます。
さらに、築50年の一戸建てを売却するには、建物を綺麗に見せる工夫など幾つかのコツがあります。よって、売却するときは不動産業者とよく相談しながら進めることが、なるべく早く売却できるポイントになります。